早朝の眩しい日差し、食欲を誘う朝食の香り、相変わらず似合わないエプロンを着こなす隆文くん、瞼が開かないパジャマ姿の私。…仕事に行きたくない。
この春から晴れて新入社員の仲間入りをした私。近頃漸く職場にも慣れてきた頃だったけど、5月に入りゴールデンウィークを過ぎてしまえば五月病生活の始まりだった。

『仕事に行きたくない…』

椅子に座りながらカップに入ったスープをスプーンでぐるぐる回しながら肘を付く。隆文くんは「またか」と言うような表情を浮かべて焼けたばかりのトーストを持ってきて向かいの席に座り、トーストを頬張りながら新聞を読み始めてしまった。いいなぁ…今日休日の人は…。というか、食事中は新聞読まないでってあれほど言ったのに…
ただでさえ、最近は二人の時間が少ない。就職した会社が違えば会うことも難しい、ましてや帰宅時間も違うし…酷いときは一日中会えない時だってあった。同居をし始めてかなりの時間が過ぎた。けど、一緒に住んでいるのに一日中会えないことはやっぱり寂しい。二人の時間を作りたくても作ることが難しい。それはもうしょうがないことだって分かってるのに、何とも我が儘な性分でどうしても甘えたくなってしまうのです。

『今日は、休んじゃおっかな…』

ふと、そんな事を提案しても隆文くんはこちらを見向きもせずに新聞の活字を読むのに一生懸命。
いつもだったら何かしら答えてくれるのに…何よ、私より新聞を取るつもりなの?

『た、隆文くんなんか新聞と一生を共にしちゃえ!バカ!!』

スープを飲み干し、トーストを一気に頬張った。少し涙が出たけど、これは喉に詰まって苦しかったからなのか隆文くんが私に構ってくれなかった悔しさなのかよくわからないけど、ぐるぐるぐるぐる私の中で怒りに似たような何かが渦を巻いていたのは確かだった。
椅子から立ち上がり部屋に籠る。学生の頃はよかった。ちゃんと二人で共有した時間もあったし、毎日学校へ行くときも部活に行くときも帰るときも同じで休日は一緒に過ごしてどこか遠出をしたりしてたくさん遊んだ。けど、社会人になるとそれは難しくて月に一度しか二人の時間は作れない。それが悲しくて、寂しくて、でも仕方がないことで、分かってるのに、もしかして私だけが寂しい思いをしているんじゃないのかな?隆文くんはそんなことこれっぽっちも思ってくれてないのかな?
今まで何度かすれ違いはあったけど、このままずっとが続いてしまったらどうしよう。 考えれば考えるほどマイナス思考になり涙が出てしまう。このままじゃ会社に遅刻してしまう。一応新社会人として遅刻だけはやめておこう。スーツに着替えて身だしなみをきちんとして部屋を出た。今日も頑張ってこよう…憂鬱だけど新社会人とはいえ大人なんだからしっかりしないと。今日は少し早めの電車だけど、もう吹っ切ってしまおう。いってきます。と声をかけようと後ろを振り向くと隆文くんが立っていてビクッと体が震えた。

『な、何してんですか…』

ついつい敬語もどきで問うような言い草になってしまう。だって、薄暗い廊下で気配もなしで背後に立っているものだから驚いてしまうのは当然だと思うし、というか驚かないわけがない。
どうして隆文くんが珍しく玄関までいるのか検討が付かなかった。…私忘れ物でもした…?
無言のまま見つめ合うこと早2分、何か言いたいなら言えばいいじゃない。気まずい雰囲気から逃れるために口を開くとぽん。と頭に少しの重心がかかったかと思うとそのまま髪をぐしゃぐしゃと掻き回される。折角綺麗に整えた髪とか癖がついたらどうすんのよとか言う前に何故だか涙が止まらなかった。
私は隆文くんと一緒に過ごしてからどうしたものか独占欲が増えたみたいで、昔より随分と我が儘になった。それは半分私がいけなくて隆文くんも共犯者ってことにしておく。取り敢えず、帰ったらたくさん撫でてもらう。今日はそのために頑張ろう。涙を脱ぐってドアノブを握った。

『いってきます、隆文くん。』






寂しがり屋の泣き虫事情








君のおかえりなさいを聞くために私は早く帰ってくるの。



「おう、早く帰ってこいよ。寄り道は無しだ。」


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久しぶりだね!犬飼くんwww
ちょっと主人公チョロいなぁって思いながら書きました!←
Twitterで犬飼botにいってらっしゃいって言われてもうテンション上がったら書いてました。
ちょっと久しぶりすぎて文章迷子すみません…

2013.05.26