小咄 | ナノ



6:47

ああ、たまにある。
目覚ましよりもほんの少しだけ早く目が覚めてしまうこと。
二度寝するには短く、かといって起き出してしまうにはなんとなく勿体無い時間。

く、と欠伸を飲み込みつつ見遣った時計から視線を隣に戻せば、寝顔。
瞼にかかる前髪を指先で除けてみると、幼く緩みきった表情が露になった。
すやすやと寝息をたてる唇に人差し指を滑らし、ふに、と軽く突く。
柔らかい。

暫く唇の感触を楽しんでいたが、ふと悪戯にその身体を抱き抱える。
そのままころりと反転させ、自分の腹の上に乗せてみた。
………。
起きる気配は無い。
それどころか自分の胸元に頬を擦り寄せ、何やらむにゃむにゃ言いながら幸せそうに眠っている。
鈍感なのか、それとも眠りが深いのか。

起きそうもないことをこれ良しとして、再び薄く開いた唇にそっと触れた。
上唇を親指でなぞり、口の端で折り返して今度は下、そのまま往復。
柔らかい。
微かな吐息が指先をくすぐる。
背中に左手を回してゆっくり撫でる。
とくとくと胸に伝わってくるのは生きる音。

んん、と声を漏らすと同時に、レイナスが胸元で身じろぎをし始めた。
流石に目覚めたようだ。。
きゅ、と唇を結び、寝ぼけ眼で二つ瞬きしてからこちらをぼんやりと見上げてくる。
お早う。

「……いまなんじ」

舌ったらずな言葉。
眠気に押し勝てない瞼。
反射的に体温を求めたのか、レイナスはぴたりと自分の身体に寄り添ったままだ。
あたたかい。
子供体温という言葉が脳裏を過ぎり、ふっと笑みが浮かぶ。
あやすように後頭部を撫でてやりながら、枕元の時計にちらりと視線を移した。
ああ、もう数十秒で7時になる。

「……57分だ」

カチ、と押した目覚ましのボタンの音に、胸元の子供体温は気付かない。
あとさんぷん、ともやもや呟きながら、髪を梳く自分の右手にうっとりと目を閉じ始める。
夢の中へ戻ってゆくようだ。
こんな朝も、悪くはないだろう。



三分頂戴



 
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テーマ「人外ファンタジー」
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