曇*3






夕暮れの中、教室棟を出て、given nameは寮へ向かった。
荷物はそう多くはないが、さすがにもう片付けないといけない時間だった。
寮の入口に、見知った姿を見つけて声をかける。

「アイラ?」

「あ、given name……」

彼女も自室へ向かっていた途中だったらしい。
振り返ると、さっきよりは幾分かマシな顔色で微笑んだ。

「あれ、どこか行ってたの?」

「うん、保健室にね、さっき蝕の最中助けてくれた子がいて……大怪我してたから、お見舞いに。
given nameは、友達無事だった?」

「無事だった。心配して損したってくらいに元気だったわ」

いや、心配なんてしてないんだけど。
蝕のダメージ的なものは一切無かったようで、本当にちょっと切れちゃってる奴だなと再確認した。

「アイラ、何号室?」

「112号室……、って、どこだろ。
given nameは?」

「あたしが137号室だから……、アイラは一階ね。あたし三階か、階段昇り降りするのめんどいなー」

毎朝それに煩わされそうだ。
あたしがそれに嫌そうな顔をして、アイラは苦笑した。

「ね、じゃあその、片付け終わったらご飯行かない?」

「そうね、大体……七時くらいになっちゃうかな。
それじゃあたしが迎えに行くわ」

アイラとはそう言って別れ、あたしは階段を登り始めた。
三階とは本当に面倒くさい。
たどり着いた三階で階段が終わっていて。最上階だったのだと分かった。
足音の厭に響く廊下を抜け、137号室にたどり着くと、そこには自分のともう一人の分のネームプレートがかかっていた。
ここで間違いはないみたいだ。
カードキーを取り出し、開ける。
男子寮と女子寮の行き来は非常に簡単であるため、防衛面から全ての部屋に鍵がついているようだ。特に女子の部屋はきっちりと。
まあ、男子寮と行き来できないと困るしねえ。文字は一つじゃロクな戦いできないから、作戦会議とかできないと困るし。
中は思ったよりは狭く、ワンルームマンションよりは辛うじてマシか、というところ。
どうやらオートロックではないらしい。閉じたドアの鍵を後ろ手に閉めた。

ダンボールが4つ程、床に無造作に置かれている。
given nameは靴を脱いで上がり、持っていたバッグを地面に下ろした。
とりあえずベッドはこっちでいいか、と向かって左の机の前に立って、引き出しを開けてみる。
と、当然のようにハサミやホチキス、のりやカッターなどが入っていた。
その中からあたしはカッターを取り出し、床に積まれたダンボールの一番上を開けてみた。
中からは自分の洋服類。
適当に詰めたため、夏物冬物がごった煮されていた。
下のダンボールも、また服。
その下のダンボールは、バッグがいくつかと、靴と、生活必需品が少し。
最後の一つには、貴重品類。もう一つ小さいダンボールが入っていて、あたしはそれを取り出し、机の一番下の大きな引き出しにしまい込んだ。
クロークを開くと、そこは思ったより広く、持ってきた服は全部入ってしまいそうだった。
適当にハンガーにぶら下げる。
クロークの下にかなり隙間があったので、キッチンに言ってビニール袋を取り、クロークの半分程に敷いてその上に靴を並べた。
さらに空いた隙間にはバッグを並べる。

「無駄遣いしすぎだわ……」

並べられたそれらの総額なんて考えたくもない。
いやでも、自分で買ったのだけじゃないもの。あたしが無駄遣いしたんじゃないもの。
そう言って自分を納得させた。
さて、もう殆ど済んでしまった。

「……あら、」

そういえば、何であたしの分の荷物しか無いんだろう。
とぼけた頭でそんなことを考えたが、すぐに理解した。死んだのだ。
しかし、初日とは。
この学校のことを知らなかったらそんなものなのかしら、given nameは呆れたように苦笑して、一旦外に出てネームプレートから不要な名前を抜き取った。

哀れみはする。
死がどれほどのものか、あたしはよく知っている。
それでも。

「同情する気には、ならないわねえ」

そう言って、備え付けられたゴミ箱にそれを落とす。
そして、ついでとばかりに電気をつけて、片付けを再開させた。
外はとっぷりと、陽が落ちてきていた。







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