しゅわ しゅわ、
泡が、うまれた。
「底から生まれて、」
「飲まないの」
「………」
ずっと持っていた瓶が今更冷たい。指先の感覚がそろそろなくなってきたみたいに、じんじんする。
瓶の中身は青い。瓶をもちあげて空に透かした。色は変わらない。同じ、青。もし空が泡立ったら地上はどうなるんだろう。蓋を捨てただけで一口も体内に入れていない炭酸が腕を伝い落ちる。ああ、つめたい。
飲まないの、また聞かれた。たぶん、答えて顔を見る。恐ろしいくらい造形の整った顔。世間一般はこれを眉目秀麗、若しくは美人だと呼ぶのだ。
そして俺はこの感情を叶わないと識りながら育てているのだ、もうずっと。
まるでラムネ瓶の底から儚く空を求む泡みたいに。