はじけて消えた、泡 | ナノ

「みんな、消える。」


あの夏の日以来、彼女を学校で見掛けなくなった。同じ学年でも滅多に会わなかったりすることはあるから、と特に気にしてはいなかった。
そうして夏休みも終わって、新学期が始まった。
暑さはやわらいできたけれど、いつもどこかあの日のことを考えている。ぼうっと空を見上げていると心が温かくなった。

秋も終わりに近づいた頃、自分の部屋で音がした。机の引き出しを開ける。彼女のくれたビー玉しか入っていない引き出し。ガラスの玉はちゃんとそこにある。不意に彼女の飲んだラムネのビンが頭に浮かんだ。泡が弾けるような音がした。
見ると透明のそれは粉々で、そういえばまだ帰りの電車代を返していないことに気が付いた。

次の日、不鮮明な記憶を辿って彼女のクラスを訪ねてみたら彼女は居なかった。友人に聞けば、夏休みの終わりと同時に引っ越したらしい。彼女と親しい、という友人を訪ねれば、彼女は昨日、死んだ、らしい。持病だったとか。

あのビー玉が割れたのは、泡が弾けたのは、彼女だったのだろうか。ただの偶然、ではないのだろうか。彼女自身、泡となって消える、なんて。くだらない。かつてのように握りしめたガラス玉は俺の手のひらを傷付けた。

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