できることなら微炭酸
「次、来るときは、」
かたん、ことん、
電車に揺られて眠っているのかと思った頭が顔を上げた。突然の言葉に戸惑う。帰りの電車代をいつ返そうかと考えていた脳は切り替えが遅い。
「もう少し炭酸が弱いのがいいね」
「やっぱり喉、痛かった?」
「少しね」
美味しそうに飲んでいたから、炭酸が好きなのかと思えばそうでもないらしい。一気に飲むのが美味しいんだけどそうすると喉が痛いよね、彼女が苦笑した。窓から差し込む夕陽にあてられて眩しそうに細めた目が俺を見る。
次が、ある。
約束した訳でもないのに、脳が言う。けれど体は正直で自然と心拍数が増える。
今日はありがと、楽しかった、また来られたら。
彼女が笑う。
ガラス玉を握りしめて、うん、また来ようねと笑った。
この日見た空の色と彼女の笑顔を忘れたくないと心の片隅が囁いた。