▽ナスカレー


「ねぇ達人〜!」

キッチンからリビングに向かって声を掛けると、「何やどないした〜」と言いながら達人がキッチンにやって来た。

「お手伝いできること見つかったんか?」
「いや大丈夫。それよりナスカレーのナスって中に入れるの?揚げたのを上に乗せるの?」
「そんなんどっちでもええよ」
「どっちでもいいって……どっちが好きなのよ?」
「かわいいかわいい彼女が作ってくれるカレーやで?もうナスなんて入ってへんでも美味いに決まっとるやん」
「あーそういうことね……」
「もう米なしでもええくらいや」
「そんなん私が嫌だから」

本当にこの男は私に甘い。
甘口カレーよりも甘いのだ。

「私のこと甘やかしすぎじゃない?こないだ太刀川さんにからかわれて本当恥ずかしかったんだけど」
「仕方ないやろ。かわいい子は何しても許される、それが世の中の摂理や」
「それは世の中の摂理じゃなくて達人の理念でしょ」

だけど達人は本気でそう思ってる辺りが恐ろしい。
米なしカレーなんて私は御免なので、炊飯器のスイッチを押した。


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