▽トマト
「ちょっときくっちートマト嫌いだからって私の皿に置くのはやめなさい」
「うるさいなぁ。これ位いいでしょ」
「好き嫌いしてると大きくなれないよ?」
「ぼくより小さい人に言われたくないんだけど」
「それはほら……私女の子だし」
「もう女の子って歳じゃないからね普通に」
「うっ……」
歳下の男の子に論破されて二の句が継げないのが悲しい……。
生姜焼きの隅に不自然に置かれたトマトの1つを箸でつまんで、口へ運ぶ。
彼はトマトのどこが嫌いなんだろう?青臭い所か、水っぽくて柔らかい所か、はたまた食わず嫌いか。
もう1つをつまみ上げると、正面に向かって箸を突き出した。
「はいあーん」
「はぁ?!ちょっとやめてよ何してんの」
「いいからいいから」
ずいっと口元にトマトを持っていくと、半ば諦めたように、それはもう嫌そうに小さく口が開いたのですかさずトマトを滑り込ませた。
「最悪……」
「偉い偉い。大きくなるよ」
「子供扱いするのやめてよ。もうアンタと一緒に食堂なんか来ないからね」
「はいはいごめんごめん」
いつも食堂に誘ってくれるのはきくっちーの方なんだけどね。
そんな青臭い所も可愛いなぁ、と思いながら最後に残ったトマトを口へ運んだ。