43 夏休みが明け、学校が始まって1週間。ぐだぐだと授業を受け、昼休み後にはまったりとし、帰りになればテンションが上がり…と、夏休み前と全く変わらない日常を過ごしている。 「じゃー、またなー」 「おー、また明日ー」 部活が終わった後仲間と古ぼけたゲームセンターで遊び、その場で解散。 「これ、絶対先輩に似合う…」 クレーンゲームで取ったシュシュを片手に、急ぎ足で家に帰る。 「ただいまー!」 ゲームのコントローラー片手に先輩は首だけをこっちに向けて、おかえりと微笑んだ。 まだ二つに髪を結んでいる、セーフだ。俺は先輩に駆け寄り、無言で髪をいじり始める。 「な、なになに?くすぐったいんだけどっ」 先輩はふにゃりと笑って、俺の腕を止めようとしてくる。だが、俺は構わずにシュシュを被せた。 「うん!やっぱ可愛い!」 無地の生地だが白くて大きな造花が目立ってて、清楚な雰囲気を醸し出している。 素晴らしい。やっぱり先輩は何でも似合う。 俺は腕を組んでうんうんと頷いた。それを見て先輩は首を傾げる。頭の上にはクエスチョンマークがぽん、と浮かんでいるようにも見えた。 「ふえ?」 鏡を差し出すと、ゆっくりと先輩は鏡を覗き込む。すると、ぼん、と音を立てそうな勢いで先輩の顔は真っ赤になった。 「なに赤くなってるんですか?似合ってますよ。ほんと、可愛いって言うか、綺麗」 「うー、花とか似合わないよ俺っ」 いつもなら自分から可愛いでしょ〜とか言うくせに、今日はもじもじしてる。なんか、可愛いぞ。というか、物凄く、良い! 「先輩、明日それで学校行きましょうよ」 「嫌だよ!」 「じゃあ、家にいる時だけそれ付けて下さい」 「なに?そんなに気に入ったの、これ」 「はい、すっごく可愛いです、それ」 「じゃあ…つける…」 先輩はちらりと俺を見て、恥ずかしそうに微笑んだ。 ああ、このまま食べてしまいたい。そんな衝動に駆られたが、我慢しつつ先輩の頭を撫でた。 多分、後数分で理性なんて物は失われてしまうのだろうけれど。 |