42 暦の上ではもう9月だというのに、太陽はじりじりと容赦無く俺達を照らしている。 ああ、暑い。汗が額から噴き出す。 「天馬ぁ、暑いっ。ジュース飲みたーい」 「はあ…もう時間ギリギリなんですけど、ていうか先輩学校行く気ないでしょ」 「行く気はあるぜ?でもさぁ、ちょっと寄り道くらい良いじゃん」 先輩は俺の腕をがっしりと掴んで、ファーストーフード店の入り口に飛び込んだ。 今日から学校だってのに…先生にこっ酷く叱られるのかと思うと気が滅入るが、先輩のご機嫌な姿を見ていたらそんなことはどうでも良くなってしまう自分がいる。 「なに、ニヤニヤしてー」 先輩がストローで液体を混ぜる度に氷がカランと音を立て、崩れ溶けていく。 「えっ、あ、なんでもないですっ。これ飲んだら、すぐ出ましょうね」 「うー、ゆっくりしてこうよ、ね?」 小首を傾げながら俺を覗き込むその瞳に、どきりとする。そんな顔されたら、駄目とは言えない。 「ね、てんま」 「もう、しょうがないなあ」 俺が絶対に"ノー"と言えないのをわかってやってるんだから。本当にこの人は、ずるい。 「先輩、宿題やってないでしょ」 「な、なんで知ってんの!」 「いや、勘です、勘。だから学校行きたくないのかなって」 「えへへ、正解。天馬は俺のことなんでも知ってるよねっ」 へらへらと笑う先輩が、可愛くて仕方ない。 こっちまで、なんだか笑顔になってしまうよ。 「そ、そりゃあ一緒に暮らしてるんだから、大抵の事は…」 自分で言っておきながらも恥ずかしくなって俺は鼻を擦る。 先輩はそれを見て、また微笑んだ。 |