39 サッカー部に戻ってきて欲しい、そう思わないか?と帰り際神童先輩に問い掛けられた。 霧野先輩は俺が入学した時点で部を辞めていたから、俺はどうしようも出来なくて。 先輩は先輩で、アルバイトをして、家に帰ってきて…充実しているように見える。けど、俺が勝手にそう思っているだけかもしれない。 今も先輩と一緒にサッカーしたいって気持ちはあっても、言えずじまいだった。 「あーもう、どうしたらいいんだよ俺」 「なに、ぶつぶつ言ってんの」 はっ、と振り返るとそこにはじと目の先輩の姿があった。 「どこまで、聞いてました?」 「ぜーんぶ」 にこり、と微笑み先輩は俺の腕に絡みついた。先輩の甘い香水の香り。 ああ、やばいな。凄く気まずい。 「サッカー部、戻ろうかな」 「!」 ちら、と上目遣いでそう言われ思わず心臓が跳ねた。色んな意味で、どきりとする。 「でもなあ、俺、今1番楽しいんだよなー」 「え…」 「バイトして、バイト休みの日はご飯作って天馬の帰り待って…それが幸せでしょうがないんだ」 「…」 そう言って貰えて俺は正直嬉しかった。さっきまでもやもやとしていた気持ちが、一気に晴れる。 「あーそれなら、俺もそれでいいです。俺も幸せです、うん」 ぎゅ、っと小さな体をきつく抱き締める。先輩はいたいいたい、と笑いながら言った。 |