36 「髪の毛、ばっさり切ろうかな…」 「へぇ…って、ええ!?」 夕食を終えソファーに寝そべりゆっくりとしていると、先輩はぼそりと呟いた。 俺はあまりの驚きに起き上がり、洗い物をしている先輩に詰め寄る。 「な、なんでですかっ。なんかあったんですか!」 よく失恋した髪を切るとか言うよな。ってそりゃありえない話なんだけど、とにかく物凄く俺は焦った。 先輩は泡でいっぱいになった手を洗いエプロンで拭く。そして節目がちにこちらを向いた。 「天馬…ちょ、っと」 「その髪型似合ってるし、可愛いし、下ろした時も大人っぽくて良いし、とにかく髪切ったら駄目ですっ」 絶対ロングのほうが可愛い!そりゃあ髪短い先輩も見てみたいけど、俺は今のお姫様みたいにつやつやで長い髪の毛が好きなんだ。 何があったか知らないけど、とにかく俺は先輩を褒めちぎった。 「うー、ただほんのちょっと言ってみただけなのっ」 先輩の頬がみるみるうちに赤く染まり、それを隠すように俺に抱きついてきた。 ふわり、と揺れる桃色の髪。キッチンの照明に照らされてきらきらと輝いている。 「こんな綺麗な髪、切るなんて勿体無いですもん」 優しく髪の毛を撫で、そのままゆっくりと腰を支える。片方の手は、先輩の頬に。 「て、んま」 「先輩」 その後は、ご想像にお任せします。 |