31 霧野先輩は俯きがちに窓の外を眺めている。 そう、最近の空はご機嫌斜めらしく、晴れたことがない。 折角の春、折角のお花見シーズンだというのに、この様子じゃ桜も散り散りだ。 先輩はおもむろに俺の胡坐の上に腰掛け、大袈裟な溜め息を付く。 「はぁ…」 先輩、お花見に行くの楽しみにしていたからな…。残念がるのも仕方ない。 よしよし、と言わんばかりに結わえる前の髪の毛を撫でると先輩はくるりと向きを変えてお互い見つめあう形になる。 「ひ・ま」 「うあっ」 さっきまでの表情は何処に行ったのやら、満面の笑みで抱きついてくる先輩。 俺はどうしたらいいのか分からずあたふたするばかり。 「天馬ぁ」 先輩の潤んだ瞳、しっかりと握られた手。どんどん動悸が早くなっていく。 「あーもう、すいません」 一生天気悪くて良いかも、なんて思いながら触れるだけのキスをした。 |