29

「もうすぐホワイトデーだよ」
「あ、もうそんな時期ですか?」
「うー!忘れてたわけ?」
勿論忘れていたわけじゃない。
とっておきのプレゼントを用意してある。
当日まで秘密にしておきたくてさっきからホワイトデーの話をスルーしている訳だ。
「あやしい」
「…何が、ですかね」
「てんま、なんか隠してるでしょ」
うわ。ばれた。俺はあたふたしながらも先輩を抱きしめた。
「ひゃ、あ、天馬っ」
「隠し事なんかするわけないじゃないですかっ。それより先輩、何か欲しいものでも?」
俺の腕の中で先輩は満面の笑みを浮かべ一言。
「赤ちゃん!」
いや、それ言われても…。想像もしていなかった答えに俺は唖然としてしまう。
先輩は大真面目に言っているらしく、今も俺を見つめて頬を染めている。
「だから、今日も、ね?」
「うあ、先輩、わ、わかりました!作りましょう!赤ちゃん!」
ああ、もう駄目だ。出来るもんなら赤ちゃんを産ませてやりたいよ。そんな事を思いながら先輩をきつく抱きしめた。



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