26 「はー、今日も寒いね」 部活が休みになった俺は久しぶりに先輩と下校している。 先輩が唇を開く度、白い息が漏れる。それを、ぼんやり見つめながら歩く。 「もう、なにぼけっとしてんの」 「…うあっ」 いきなり手を握られ、どきっとしてしまう。ふわふわの手袋の感触が、あたたかい。 「ほら、寒いから早くうち帰ろー」 俺を覗き込んでにっこり笑うと、また歩き始めた。揺れるツインテールと、マフラー。 鼻歌を歌いながら自分のペースで歩く先輩が、可愛くて仕方ない。 俺はなんて幸せものなんだろう。なんて、ふいに思う。 先輩と一緒に帰って、一緒にご飯食べて、手繋いで寝て、起きたら先輩が居て。 色んな楽しいことが頭に浮かんできて、ついつい口元がゆるんでしまう。 「てんまー、今日なに食べたい?」 「先輩が作るものならなんでも!」 |