20 「てんま、てんま、まーくんっ」 「うわ、絶対良い事あったでしょ、先輩」 先輩は帰ってきて手も洗わずに、ソファーに座ってる俺の上に跨り、べたべたと俺の頬を触った。 「まーくん、まーくん!」 「なんですか、もう、落ち着いてください」 ああ、TVが見えないじゃないか。先輩は手をぶんぶんと振りながら楽しそうに話しだした。 「俺ね、テストで100点取った!」 先輩はキーホルダーがじゃらじゃらとついた第二鞄から、その100点満点のプリントを取り出して、俺に見せ付けた。 「おー、すごい」 生返事で返すと、ぽこり、と頭を叩かれる。 「いでっ」 「約束したじゃん!覚えてないの?」 先輩はじろり、と横目で俺のことを見る。 「えー、なんでしたっけ?」 「100点とったら、俺のこと名前で呼ぶって!」 「……え、あ、そうでしたね」 この場合、どう呼べばいいんだろう。 蘭丸?蘭丸さん?蘭丸ちゃん? 「あの、先輩としてはどう呼んで欲しいんですか?」 「らんまる……ってかんじで!」 ああ、なんか今宝塚みたいなオーラ出てた。もしくは場末のホスト。 「だってさ、かっこいくない?俺がお前を守るよ……みたいなさあ!」 先輩は、心まで女子になってしまったようで、瞳をきらきらさせて俺の両手を掴んだ。 そして手を握り締めたまま、語り始める。 「今日も女子と話してたんだよ。呼び捨てって、良いよねって!」 「はあ……」 「ほら!蘭丸、お前の事を一生離したりはしないぜ……って言って!」 あまりのきらきら加減に俺は吹きだし、先輩の胸に顔をうずめた。 どんな俺を求めてるんですか先輩。夢見すぎです先輩。そんなあなたが愛しいです先輩。 ―――――――― 夢見てる先輩をかきたかった。 多分天馬氏のこと、白馬の王子様かなんかだと思ってる。 |