14 「うー、あー」 眉間にシワを寄せ、テーブルに肘をつけ、うなる先輩。 「先輩、どうかしたんですか?」 炭酸をグラスに注ぎ、先輩に手渡す。 そのグラスに口を点ける事無く、まだ真剣な面持ちで何かを考えているようだ。 「なにか、悩み事ですか?」 「あのね、いい歌があったんだけど、名前もバンド名もわかんなくてさー」 ああ、将来の事とか、部活の悩みではない訳ね。 物凄い顔してたから、思いつめてるのかと思ったけどそうではないらしい。 「なんか、ヒント下さいよ」 「〜♪って感じの曲なんだけど」 「えっ、ちょっと、かわいいんですけど」 歌とかどうでもよくなるくらい、先輩の鼻歌うたう姿がグッときた。 やたらと高くて可愛い声と、指でリズムを取る仕草。とても素晴らしい。 「〜♪♪って、きいてる?てんまー」 「そういや先輩とカラオケとか行った事無いですよね。今度行きましょう」 「何それ、今の流れでなんで誘う?あーもう、どんな歌かも忘れちゃった」 「あはは、いいじゃないですかもう」 「まー、いっかぁ」 ―――――――― これぞいみなし話。 |