13 放課後、夕暮れ、河川敷。 なんでこんなに汗だくで自転車を走らせているんだろう。と、我に返る。 「ちんたらするなー、てんまー」 ああ、後ろには軽いとは言えども一人分の重さが掛かっている。 だからこんなに辛いのか。 先輩は俺の背中をぱんぱん、と叩きもっと速く!と急かしてくる。 普段の部活での練習より、汗をかいている気がした。 「おれ、今日5時間目体育だったんですけどー」 そんな甘えた良い訳は先輩には通じないらしく、腰に回された腕の力は強まるばかり。 「よし、なんか食べて帰ろう!てんま、町までこのままぶっちぎれ!」 うう、困ったぞ。そりゃあ腹も減ったけど、そこまで行く力も無い。 「せ、先輩、かわってくださいよ……」 一旦ブレーキをかけ、先輩に哀願する。 「えー?男らしくないなー、天馬くん」 先輩はふふん、と鼻で笑い自転車の荷台から降りると、無言でガッツポーズする。 「かわってくれるんですか!?」 「任せたまえ」 そう言うと、豪快にスカートを翻しサドルに腰を掛ける先輩。 なんだか、凄く男らしい!小さい背中がいつもより頼もしく見えてきた。 「早く、後ろに乗りな」 俺は目を輝かせ、荷台に座る。 「天馬?」 「……」 どうしたらいいんだ。 乗ってから気付いたが、何処にしがみ付けば良いのか分からない。 俺はきょろきょろと安心してしがみ付く所を探すが、どこもかしこも柔らかく、触れるのを躊躇ってしまう。 「なにしてんの」 「あ、の、やっぱりいいです!俺が運転します!」 「えー、やる気だったのにー」 「ほら、行きましょう!何処に食いに行きます?」 俺は先輩の体の感触が忘れられず、どきどきとしながらも自転車で走り続けた。 |