10 「研修、旅行?」 「はい、先輩は去年行ったでしょ。先輩は、今年修学旅行じゃないですか」 先輩はしおりを眺め、首を傾げた。 「一緒に、行っちゃだめ?」 「ちょ、駄目に決まってるじゃないですか」 学校行事だし、そもそも、先輩は二年だし。 「えー、だって、1日帰って来ないんでしょ?やだー」 しおりの日程を指差し、先輩は涙目で訴えた。 「やだって言われても、あの、先輩だって今度修学旅行行かなくちゃいけないんですよ?」 「俺、いきたくないっ」 俺の腕に引っ付いて離れない先輩。片手にはしおりがぐしゃぐしゃに握られている。 目を真っ赤にさせ、ひくひくと嗚咽を上げる先輩。 それを見て、俺はもう耐えられなくなり先輩を抱き締めた。 ああ、俺も泣きそう。目頭が熱くなるのが自分でもわかる。 「せんぱいー、やっぱ俺も行きたくないー」 「てんまぁー」 ―――――――― ばかっぷるだね! |