白いワンピース

『今日、出かけないか?』
『播(≧▽≦*)カキ氷たべたい!』

夏休み、2日目。
前日の気温よりプラス2度も上がり、体が汗ばむ。
部活も休みで暇があり、いつも自分からはしないメールを送ってみた。
カキ氷か。近くのデパートに行けば、なんでも揃ってるし丁度良さそうだ。
待ち合わせの公園に着くと、先に霧野が待っていた。
「ごめん。待たせたか?」
「いや、今来たとこ」
「今日はどうする?」
「神童の好きな所でいいよ。あー、あっついからどっか店入りたい」
薄い生地のTシャツを裾を持ち、ぱたぱたさせる霧野。
Tシャツと細身のジーンズというボーイッシュな着こなしが、逆に男女の区別が付かないように見える。
「デパート行こう。多分涼しいぜ」

「はぁー、涼しい。いいねー」
霧野は店内に入った瞬間大袈裟に腕を広げ、気持ち良さそうにする。
とりあえず、霧野が服を見たいというので2階に上がる。
「新しい服欲しいんだよね、俺」
「どういう系の?」
「さわやかで涼しそうなやつ!」
「おー、アバウト過ぎてわからん」
もう、夏物が値下げされていて【半額】のタグが付けられたものが大半だ。
霧野は目を輝かせて服に見入っている。多分声かけても耳に入らないだろう。
俺は俺で霧野に似合いそうな服を探そう。

パッと目に付いた服は、白いワンピースだった。
夏の涼しそうな素材で出来ていて、フリルが少しあしらわれている女の子らしい服だ。
なんとなく、じゃなくて確実に似合うと思ったのだ。
綺麗な桃色の髪の毛に、白いワンピースがどれだけ映えるだろうか見てみたくなった。
トルソーにかかっていた服と同じ服を探し、霧野に差し出す。
「これは、どうだろうか?」
「……涼しいだろうけど、ねえ、神童」
「絶対に、似合うと思うんだ。だからこれ着てくれ」
至って俺は真面目だ。
男とか女とかそんなちゃちなものじゃない。霧野に似合うから着て欲しいのだ。
俺の熱い気持ちが伝わったのか、霧野は黙って受け取り、試着室に向かった。
ゴソゴソと着替えている間、俺は白いワンピースに似合う麦わら帽子と、サンダルを選んだ。

「なあ、これで良いのか?大丈夫なのか?」
心配そうな顔をしているが、全く問題ない。
とてもよい。
俺は霧野の腕を掴み、レジまで行き「これ下さい、あとこれも。着ていくのでタグ外して下さい」と勢い良く叫んだ。
「なっ、なんで俺、こんなことになってるんだよ」
「似合ってるから、いいだろ。かわいいよ、霧野」
「はあ…」
霧野は真っ赤な顔をして、それ以上に怒らなかった。

デパートのフードコートにつくと、早速カキ氷おごれよ、と霧野さん。
「俺いちご」
「じゃあ俺はブルーハワイ」
いちごのシロップと霧野の髪色が同じで、なんだか可愛らしいな。
じっくり見てしまったせいか「やらないからな」といわれた。
「霧野、次どこ行く?」
「河川敷!水遊びしたい」
「まだ外は暑いとおもうぞ」
「いいんだよ、この服意外と動きやすくてさ。遊びたい気分なんだ」
じゃりじゃりとスプーンで氷をかき混ぜ、笑顔の霧野。
「まあ、日に焼けた霧野も見てみたいし、食べたら行こうか」
「おー!」

サンダルが履きづらいのか、ふらふらした足取りをするので手を握って引っ張ってやる。
「……ありがと」
ふふっ。と笑う霧野が可愛くて、もうそのままお持ち帰りしたい位だ。


「なあ、もう暑くて仕方が無いから、俺の家で涼みません?ねえ、霧野さん」
「ははっ、逆にあっつくなりそうじゃないですか?」
俺達は進路変更した。多分夜は長くなりそうだ。




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