ホーリーロードが閉幕しいつもの生活に戻った俺は、何度も足繁く病院へ通った。
自分自身の具合が悪いわけではなく、太陽のお見舞いに行くためだ。
「太陽、調子はどう?」
「あ、天馬っ、今日も来てくれたんだね。嬉しいよ」
あの試合の後一度もボールを蹴る事が許されていないのに、俺が見舞いに行くといつも明るい笑顔で迎えてくれる。
俺があげたサッカーボールは、机の上に飾られている。それをたまに撫でては、俺に決勝戦の話をしてくれってせがむんだ。
最初は友達としてどうにかしてあげたいって思ってたのが、どんどん、違う気持ちになっていって。
健気な太陽の姿に、俺はどうすればいいのかわからなくて、いつも頭を掻いてばかり。
太陽は、友達以上の気持ちなんて俺に持ってない。絶対、そうに決まってる。

「あのさ、天馬」
「ん?」
太陽は真剣な顔で俺を見つめ、問いかけた。拳をぎゅ、っと握って、何を緊張しているんだろう。
「俺の所にばっかり来て大丈夫なの?…あ、俺は、嬉しいんだけどっ」
「え、どういうこと?」
「だから、空野さん、って人と仲良いじゃないか、天馬」
どうも勘違いしているらしく、俺と空野が付き合っていると思ったらしい。
「あはは、太陽、顔真っ赤!」
「もう、笑わないでよっ」
おかしくて笑いを続けると、次第に太陽の瞳が潤んでいく。
「え、ちょっと、太陽、泣かないで」
「泣いて、ないよ!」
パジャマの袖で瞼をこすり、鼻水を啜る太陽。
完全に泣いてるじゃないか。ていうか、俺が泣かしたんだ。
「ご、ごめん!」
「うう、泣いて、ないも゛ん」
光を浴びてきらきらと艶めくオレンジの髪を撫で、何度も謝る。
「俺、太陽の事、好きだからさ」
「…う?」
「泣かれたら辛いっていうか、俺が泣かせちゃったから、本当に、ごめん」
太陽は瞬きをぱちぱちとして、俺を見つめた。ぽかん、と口は半開きで、今の状況を飲み込めないらしい。
俺だって、そうだ。言うつもりなんて、なかった。だけど、何故か口が勝手に、動いてしまったんだ。
ああ、また勝手なこと、言ってしまう。
「太陽のこと、これからも支えていきたいんだ。友達とか、じゃなくて、その」
「て、んまっ!」
温かくて、柔らかい、感触。太陽はベッドから身を乗り出し、俺に抱きついてきた。
「ボクも好きだよ、天馬っ」
「うあ、あ!」
あまりの勢いに椅子から転げ落ちそうになって、太陽の体を抱きしめた。
太陽は俺の顔を覗き込んで、満面の笑み。


「てんまっ、もっかい好きって言ってくれる?」
「う、あ、もう恥ずかしいから勘弁して!」




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