成長期 「背、のびたんじゃないか?」 部活帰り、家に寄ってくれた先輩がふいにひと言。 俺と先輩は立ち上がり、そのまま背比べ。 「あ、えっと、ほんとだ!」 「しかも、なんか去年よりがっちりしてきたっていうか…」 去年は先輩を見上げて話してたけど、確かに今は俺の方が大きい。 「俺、ちょっと、ていうか、凄く嬉しいです!」 首を傾げながら俺を覗き込む先輩の頬は、赤く染まっていた。 「やっと男らしくなってきた気がする、俺!」 「うー、悔しいけど、でも…」 先輩の頭をなでなでしてあげたら、更に真っ赤。 その真っ赤な顔を隠すように、勢い良く抱きついてくる先輩。 「うあ、先輩」 「…天馬、もっと大きくなって、もっと格好よくなっちゃう?」 顔をうずめている所為で、くぐもった声でぼそり。か、可愛い。 先輩の小さな背中をさすって、優しく抱きしめると先輩のシャンプーの良い香りが鼻を擽った。 「やっと、言える」 「…?」 「俺が先輩を、守りますから」 なんだか、自分なりのプライドというか、そういうのがあって前までは言えなかった。 その理由は、"先輩より背が小さいから"。 まだまだ俺達は成長期だから、先輩のほうがまた大きくなるかもしれないけど、とりあえず言っておくことにした。 |