脱走 木枯らし荘の入り口で、慌てふためく秋姉の姿。 まずは落ち着いて、と一声掛けて、落ち着かせる。 「あのね、今、買い物から帰ってきたら、サスケがいなくなってたの!」 「ええ!?」 いつもなら犬小屋でのんびり寝ているサスケの姿が確かに見えない。 あるのは、外れた首輪だけ。 多分、首輪がゆるんでたんだなと冷静に分析してる暇じゃなかった。 とりあえず秋姉と手分けして探すことにする。 いつも行く河川敷に来てはみたが、姿はない。 途方に暮れていると、ポケットに入れていた携帯電話がぶるぶると震え始めた。 秋姉からかな、なんて思いながら携帯を開くと、"先輩"からの着信だった。 「なんでか知らないけど、サスケ、俺んちの前にいたんだけど、持ってったほうがいいよね?」 早々と一件落着。先輩も 「俺そしたらそっちに」 「いいよ、今木枯らし荘に向かってるから」 「あ、わざわざすいません、そしたら後で」 「うん、じゃーね」 ああ、良かった。俺は胸を撫で下ろし、家に戻った。 木枯らし荘の前に、先輩とサスケの姿。 先輩に頭を撫でられてサスケはでれでれと鼻を鳴らしている。 くそう。俺もされたい。なんて言ってる場合じゃなくって! 「サスケー!!」 俺の方を見て、しらけた顔をするサスケ。折角会えたってのに、そんな顔することないだろう。 「ほら、天馬と会えて良かったな、サスケ」 また先輩の横にぴったりとくっついたまま、離れないサスケ。 「先輩、ほんと助かりました」 「どーいたしまして」 先輩とふたりでくしゃくしゃと撫でてやると、サスケは喜んで立ち上がり、じゃれついてくる。 よく見ると、首輪に可愛らしいリボンが結われているではないか。 首をかしげ、それを見ていると先輩が気付いて口を開いた。 「それ?サスケと俺、お揃いなの」 「えー」 そういえば、珍しく髪の毛を一つに纏めている。根元には、サスケと同じリボンが結ばれていた。 「サスケ、すっごいかわいいから、このリボンあげたんだ」 「うう、サスケずるい!抜け駆けするなよっ」 サスケは自慢げな顔をして、また先輩に寄り添った。 「サスケ良いよな、もふもふだし、男前だし!」 「うあ、先輩、俺の事捨てないで!」 |