雪 「ほら、早く、行きますよ先輩」 「うー」 どのブーツを履くか悩んで数分。 仕方なく俺がブーツを履かせると、ぶーぶー文句を垂れ始める。 「えー、これ?あってる?変じゃない?」 あまりにうるさいから、真っ白いニット帽を深く被せて黙らせる。 「前、みえないー」 先輩は俺にべったり引っ付いて、体重をかけてくる。ああ、ごめん、俺が悪かった。 帽子の位置を整えて、いざ外へ。 「よし、行きましょう!」 ドアを開けると、雪で真っ白になった世界が広がっていた。 「おー!降ってる降ってる!」 「すごーい!」 手を繋いで走ると、ふたり分の足跡が綺麗に雪の表面にかたどられる。 積もった場所に踏み込んでは、足跡をつけていく。楽しくて、しょうがない。 踏みしめる度にみし、みし、と小気味好い音が響いた。 「雪、最高!」 先輩は頬を真っ赤にさせながら、にかっ、と満面の笑み。 白いニット帽、ふわふわのコート、うさぎの手袋。この場所にぴったりの格好の先輩。 勿論、俺の選んだブーツだって、しっかり似合っている。 「ちょっと、先輩、そのままでいてね」 「なになに?」 携帯をポケットから取り出し、カシャリ、と一枚。 首を傾げてる先輩を激写。ナイスタイミング!俺! 「あー!!」 「いいじゃないですか、可愛く写ってるんだから」 「もう、消してよっ」 「あ、ちょっと、うあ、ああ!」 勢い良く抱きついて来るもんだから、ふらついて、そのまま雪の上に尻餅をついてしまう。 「つめた!」 「あはは、天馬が悪い事するからこうなるんだよ」 先輩は俺の上に乗っかったまま、またにっこりと微笑んだ。 |