これが恋

「剣城、今日ひま?」
「はあ?」
こいつ、何考えてるのか解らない。
女みたいな顔して、女みたいな髪型して、そのくせ女だって言ったら怒るし。
キャプテンと仲良くしてると思えば、天馬に媚び売って。
最近、俺にも馴れ馴れしいし、凄いがつがつ人ん中入ってくるし。
毎日練習終わったら俺の横に絶対居て、にこにこしてくるのには勘弁して欲しい。
なんで俺にそんな事すんだよ。神童とか、天馬とかにやってくれと言いたい。
あいつが女だったらそりゃあ考えてもいいけどな、美人だし。


昼休みが終わり、面倒くさくて屋上でサボることにした。
誰も居ない屋上は、凄く気分がいい。
ベンチに腰掛けて、ぼけーっと携帯を眺める。
ああ、今日も、いい日……だ?
「つーるーぎっ」
「うあ、お、お前」
「さぼっちゃ、駄目でしょ」
お前もだろ。と言いたい所だったがぐっと堪えた。
睨みつけても、全然怯まないし、余計にいらいらとさせる。
どんどん俺に近付いては、距離を縮めていく。
「ここに居たら、駄目かな」
上目遣いで小首を傾げる霧野。
なんなんだよ。一瞬、くらっと来たじゃないか。
可愛い、っていうか、やっぱり美人だ、こいつ。
近くで見る霧野は、初めてで、じっくりとその顔を見つめてしまう。
長い睫毛、大きな瞳、柔らかそうな唇……って俺なに考えてんだ。
「剣城?」
恥ずかしくなって目を逸らす。が、霧野はそれを許さなかった。
俺の手を握って、にっこりと笑う霧野の姿にどきりとする。
「あのさ、俺、剣城のこと、気になってるんだけど」
「……お、おい」
なんだ、なんだんだよこいつ。いきなり告白じみたことされたって、困る。
この状況なら誰だって"俺も気になるから、付き合いませんか"って言ってしまいそうになるだろ。
実際、今、俺だって悩んでいる。
こんな美人を自分の下でなかせたい、とか、一瞬でも思ってしまった自分を責める。
一方霧野はきらきらと瞳を輝かせ、俺の言葉を待ち望んでいるかのようだ。
仕方なく俺は咳払いをして、口を開いた。
「ちょっと、時間、くれないか?」
「悩んでくれてるってことでいいの?」
「ん、まあ、そう思ってくれてもいい」
霧野は大喜びでぶんぶんと繋いだ手を上下させた。ゆらゆらと体は揺れ、視界がぶれる。
ああ、なんか、こいつのペースにのまれてないか?俺。
繋いだ手の柔らかさ、温かさに俺はどきどきしっ放しで、どうしたらいいのかわからない。
やっぱ、俺も霧野の事、好きなのかもしれない。


こんな状況で居るのも後から面倒になる気がしたから、さっきの言葉を撤回して触れるだけの口付けをする。
口をぱくぱくとさせる霧野の姿がなんだかおかしくて、声を出して俺は笑った。
こんなに笑ったのは、いつぶりだろうか。
「お前、可愛いよ、本当に」
「つ、るぎの、ばか!さっき、時間くれとか、言ったくせに!」
顔を真っ赤にしてファーストキスはロマンチックな場所でうんたらかんたらと文句を言う霧野を軽くあしらって屋上を後にした。



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