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これが、完全体ー・・・



「そうだよ」
『誰だ』
「ん?ボクのこと?」
『そうだ』
「そんなことより、君、自分の姿を見てご覧よ!せっかく、君はパーフェクトを、手に入れたんだからさ!」




セルはそこで初めて、自分の意識を自身の手の平に向けてみた。
前より小さくなった、白い手。

「くっくっく・・・やはり完全体といってもたいしたことはなさそうだ。大きさも前より縮んでやがる」

上空に居る筈の、ベジータの声がやけにはっきりと聞こえる。

「人を見かけで判断するな、は戦士の基本の筈なんだけどね。ねえ、まだ自分の身体に、慣れてないだろう?」
『聴覚の精度が違うな』
「意識を向けている対象の声であれば、かなり距離があっても聞き取れるよ」

「わーーーーっ!!!!」


18号を吸収された事に逆上したクリリンがセルの後頭部に攻撃を加える。
だがー・・・。

「逆に、意識を向けていない音はカットできる。集中力を高められるからね」
『なるほどな』
「そ、そんな・・・」

クリリンがセルの首もとを狙ってはなった気円斬も、何も覆われていないような白い首に直撃し、そして霧散した。

「ちょっとウォーミングアップが必要だね。手始めにさ、背後に居るハエを払ってみようか。もちろん、殺しちゃダメだよ?殺す方が簡単なんだからね」

セルはそれに答えず、腰を少し屈めて、パンチを数発繰り出してみる。

『・・・軽い・・・』
「でも、威力はキミが思っている倍以上だからね」
『心得た』

ニヤッとセルが口角を上げて微笑んだ時点で、気づけば良かったのだ。いや、その前に攻撃が通じないと解った時点で、クリリンはそこを離れるべきだったのだ。

「しゃあっ!!!!」

振り返る事もせずに飛び上がったセルの回し蹴りが、その頸椎にヒットするまで、クリリンはまったく反応することが出来なかった。


「どう?悪くないでしょ」
『ああ』
「でも、動きが固いね」
『しかたない。まだうまくリーチがつかめないんだ』
「尻尾のある期間が長かったからね。バランスの取り方も変えないとだよ」
『少しサイズが小さくなっているようだな』
「それが戦闘体型としてはベストの比率なんだよ。自分より小さい相手には懐に飛び込まれにくく、自分より大きい相手には逆に飛び込みやすく設計されているんだ」




この、頭の中に響く声の主は誰だー・・・。
すくなくとも周囲に居る人物の声ではない。
そして、私以外には、聞こえない、声。


「あんなカスみたいなやつをいたぶって嬉しいか?」

ベジータが、セルのすぐ側に降りてきた。


「彼・・・ベジータだっけ。彼くらいのパワーならガード中心で積極的に攻撃を受けるようにするといい。多分片手だけでも余裕だけど、ちゃんと身体を慣らす為にも両手に刺激を与えるようにしてね」

『ある程度刺激を受けた方がいいのか?』
「そうすればニューロンが活性化するからね。早く身体に馴染みたかったら、そうすることをおすすめする」

「どうやら思った通り完全体になっても大した事はなさそうだな」

「ふふっ、殺気立ってるねー」
「こいつは失礼した・・・」

自分の耳に届く声も、どことなく違って聞こえる。
これはわたしの声が変わったのか?
それとも聴覚の進化によるものか?

「ではキミが、私のウォーミングアップを手伝ってくれるかな?」
「いいだろう・・・ウォーミングアップでおしまいにしてやるぜ」
「よろしく」
「よろしく」




| 
bkm

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