逢 4/5 |
「気づいてる?」 「何を」 「もう、私は君と言葉を交わす時に、音声というものを発しないで話すことはできないんだよ」 パルフェとの会話は、セルにとっては呼吸と一緒だった。 身体を保つために身体が無意識ながら随伴する運動である呼吸は、意識しさえすればその息を止めることができる。 だが、それは呼吸が永久に停止することとは異なる。 意識しさえしなければ、それは勝手におのれを生かす方向に無意識のうちに働く。 意識しさえすれば、それを一時的ではあってもも止めることも、早めることも、深くすることも可能だ。 パルフェとは、そういう存在だった。 「他に人がいなくてよかったね。独り言が激しい人だと思われていたよ」 「・・・」 「明日、さ」 「止めても無駄だぞ」 「止めるとでも思ったの?」 「なんとなくな」 もう、ふたりはひとりではない。 その距離はどんどん開いていくことを互いに感じていた。 「そろそろ、話してくれないか。君はどこからきたのか」 パルフェは観念したように溜息をついた。 「わかった。じゃあ、目を閉じてもらえる?」 そうすれば、逢えるから bkm back |