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「気が変わってくれて嬉しいよ」
「違うよ、それは」
「私の気が変わった、ということか」
「そうだよ」

それは強さを図るためだけではない。その生命活動の胎動を、その存在の存在する証を、それと感じようとし、そうしようと鍛錬したものにのみ感じられる。


そう、気は常にそこにあり
気を気にする者にのみに感じられ
感じようとする者のみにのみ伝えられる
感じようと
意識しようとしなければそれは
常に流転し
その本体すらも
そのことに気が付かない

「パルフェ」
「何」
セルはこの世で唯一無二。この世でドクターが採取することのできたあらゆるつわものたちの細胞がもととなり、その複数の特徴を持つ気を併せ持ち、そして2人の人間の細胞が加わることによって完成された。
その、思考の片隅に在るパルフェ。
「パルフェ、なぜ私がお前に身体を欲するか聞いたかわかるか」
「またその話?」
不機嫌さを隠さない声色に、焦ることはなく、しかし逃すまいと素早くセルはその意識を抱え込んで囁いた。
「大事なことだ。大事なことなんだ」
これを逃せば、これが最後かもしれない。明日、すべての望みがかなう。叶ったと同時に、追い求める世界の終焉が来る。どちらかの息の根が止まる。

そのことに関しては、特に感慨はなかった。
しかし、パルフェの存在が段々と自身のなかから離れていくことは、セルを焦らせていた。
時間がない。
このままでいられる時間は、少ない。

「私の覚えている、一番古い記憶について問うた時のことを、覚えているか」
それが私の、一番古い、記憶。
「忘れてはいない」
「そうか」
「覚えていてくれて、ありがとう」
「・・・」
「セルが、私を忘れていないことは、知っているから」

しょせん、何者かの間に生まれ落ちた命ではないのだ。

「本当は溶けてなくなるべきだったのに」

そもそもそれは命と呼べるものなのか。

「誰がだ」
「ねえ、今、ここにいて、セルと会話しているのは誰」
「何」
「ねえ、本当は何もかもわかっているのに。なぜそれを、私に言わせようとするの?」
「なにを」
「君はやっぱり意地悪だ」
「そうだ。それはお互い様だ」

ひとつの身体は、ひとつの意思に従うべきだ。




「離れたく、なかったの」


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bkm

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