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ゲロは妻の行動に驚きはしたが、妻はそれ以上のこと・・・つまり、ゲロに父親であることを要求はしなかった。これまで通り、軍からの給金はすべて妻に渡す。 それで、万事すべてがうまくいっていた。 世の中の夫婦という契りを交わした物同士とは到底思えない間柄の2人ではあったが、その2人の関係を疑うものはなかった。疑う、余地もなかった。互いが互いに干渉もせず、互いが互いの赴くままの生活を営む。 好きな研究に打ち込める環境を存分に生かす夫と、生活費に関してはなに不自由もなく子育てに専念出来る妻。 その関係は、一緒に暮らしながらも対話もないままに溝を深め、互いに伝える事を怠りながらもその関係悪化を相手のせいに仕合い、ののしり合うもの同士より、よほどうまくいっているように、見えた。 その妻が、事故で逝ってしまうまで、その平穏な関係は保たれていた。 bkm back |