ジ 3/10 |
パルフェには、セルのことが、わからない。 それは、パルフェ自身が自分の【存在意義(le sont d'etre=レゾン・デートル)】を見失う事と同義だった。 丁寧に背表紙を辿るセルの探し物が終わる迄、パルフェはしばらく完全に意識を閉じた。これ以上わけのわからない感情に支配されていたくなかった。これ以上、自分の意義を自分に問う事を突きつけられるような会話に、巻き込まれたくなかった。 そんな自分を、セルに悟られるのが嫌だった。 ーーー・・・しばらくしてパルフェが意識を戻すと、セルは丸椅子に座って一冊の本をめくっていた。 「・・・」 『やっと気づいたか』 その口調には若干の揶揄が含まれていた。 それにまたまた気を悪くしたパルフェは、またぶっきらぼうに返す。 「読書の邪魔しちゃ悪いよね。またひっこもうか」 『構わん』 「知りたい事はわかった?」 『いや、まだだな』 「へー、完璧なセル様にもわからないことがあるんだね」 パルフェの物言いに小さくため息を吐いたセルは、諭すようなあきれるような感情をのせて、言葉を続けた。 『お前はどうしてそういうものの言い方しか出来ないんだ?』 「そういう?」 『どうもお前の口調は、余裕がなくていかん』 「嫌なら、変えればいいじゃない」 『変える?』 「ボクは、君を反映するんだよ。ボクの口調がこんなんなのは、キミにも少なからずこういうガキっぽいところがある証、ってこと」 『では、私が【変えれば】、お前の口調も【変わる】のか』 「そうだよ。あくまで口調でよければね」 bkm back |