目のいい店員さんシリーズ
かみさまにあいされたひと




(×刀剣乱舞)
「どうしてですか、かみさま」裏側 店員視点
霊力枯渇元審神者の話





新宿にある、とある喫茶店。
私はそこの店員である。
とはいっても、強面マスターとかわいい名物犬がいるだけの小さな喫茶店だ。大賑わいという訳では無いけれど、常連さんに愛されるとても素敵な喫茶店。
まぁ、その常連さんにもいろいろあるんだけれど。
かくいう私もそもそもはその常連の一人だったのだけれど、仕事でヘマして怪我を負って仕事ができなくなって困ってたところをマスターに拾ってもらった。
元職場では現役は引退したとしてもサポート側とかで働かないか、と言ってはくれてたんだけどね。
でも、私はその話しを断ってマスターの言葉に甘えてここで働かせてもらってる。
前の職場の人たちも常連の人が多かったりするからよくあったりするけど、みんな元気そうで何よりだ。
ところで、いきなりだけれど、私には特技というか人より優れてると言っていいところが1つある。
―――そう、私は人より少しばかり目がいいのである。
とはいっても、まぁ、元職場ではそういった人ばかりだったわけだけど。そのちょっと特殊な環境から外れると、私のこの目は少しばかり特異なものであったりする。

そしてこの喫茶店には少しばかり特異なお客さんが訪れることが多いのである。



case2
かみさまにあいされたひと
episode1


とまぁ、前回とほぼ寸部違わずに口上をしたわけだけど。
今日も1組のお得意さまなお客さんについて話したいと思います。
前回の少年と似ているんだけどね。

その1組のお客さんはいい年頃のお兄さんとお姉さん。ふたりでもきてくれるし、それぞれ1人でもきてくれる。
そっとしておいてほしいオーラがでてるから、そんなに話しかけたりはしないけど私からすればよく来てくれる常連さん。いつかもう少し気軽に世間話をするのが目標です。

今日はお姉さんが先に来店し、それから数時間後にお兄さんがきた。やっぱりどこかふたりして雰囲気がくらい。かなしい、のかな。そこが少年と違うところかな。

お兄さんをお姉さんがいる席に案内をすると、ポツポツと会話を始めた様子。
ふたりともすごく寂しそうなんだけど、お姉さんの方が余裕が無い感じでお兄さんの方が少しずつ周りを見る余裕がある感じがする。
私が看板犬のかわいいカナエさんと遊んでたりすると視線を感じるし。…ちゃんと仕事してるよ!!!
あとは私が何気なくお兄さんやお姉さんの方を見てると気づかれる。いやぁ、ちょっと見えるものが気になって!

そう、目がいい私は見えるのです。
彼らの傍にある存在が。



ひとりだったり数人だったり。お兄さん、お姉さんの傍に寄り添うものがある。
それは来店するごとに違っていたり、また同じものだったり。前にお兄さんの傍にいたものとそっくりなものがお姉さんの傍にいることもある。
お兄さんとお姉さんの傍にいるものが同じだったりすることもあるんだよ…!
だからそれは、同じでいて違う存在なのだと思う。

もの、といっているけれど、あれはたぶん、神様に近いもの。お兄さんたちは神様に愛されてるのだろうなって。
神様はたぶん私が見えることに気づいてる。けど、無関心。

前の職場で聞いたことがある。時の政府と審神者、刀剣男士について。苦い顔して上司が話してたっけ。
きっとお兄さんたちはそうなんだろう。
意外と見るけれどね、審神者と刀剣男士。

でも、お兄さんとお姉さんには見えてないみたい。
もしかして、審神者じゃないのかな。…それとも見えなくなったのかな。それはとっても寂しい、ね。


店内を奏でる音楽の音を、耳障りにならないほどに上げる。
お姉さんの、そしてお兄さんの溢れだす感情を少しでも覆い隠すように。…他の人に見られないように。
まぁ、いま店内にはふたりしかお客さんいないんだけどね!

兄元にきたかわいいカナエさんを優しくなでる。もふもふだ…

…私ももし、この特技がなくなったら悲しいのかな。
嫌な思いもたくさんしたけれど。でも、この目が繋いだ縁もあったから。


でも、繋いだ縁はなくならないよ。
お兄さんとお姉さんには見えなくても、傍に寄り添う彼らはずっといるから。

もし将来、誰かと結婚して。子供ができたら。
その子供には見えるかもしれないね。子供の頃は見えたりする、っていうし。
その子供が大きくなって、孫ができたらその子が。
あと、死が近づくと見えやすくなるっていうから。最期を迎えら時には見ることができるかも。
それは幸せなのか悲しいのか、寂しいのかは分からないけど。

少しでも傍にありつづける存在を感じられればいいのになぁって。

耳を澄ますと聞こえるんだ。

『主、ようやく読んだのかい?』
『主!主と前に読んだ本、おもしろかったね!あれ好きだよ!』
『主の結婚式かぁ。嬉しいけど、寂しいね』
『そいつと結婚するの?!…俺がいるのに!』
『主、泣かないで。私たちはずっと傍にあるよ』
『哀しいのなら、忘れてもいいよ』
『主』
『あるじ』
『大将』
『ぬしさま』
『主!』


こんなに賑やかなんだよ、大丈夫、ひとりじゃないよ。
そう言えればいいのにね。でも、それはかえって残酷にもなるから。
私の言葉は届かないから。



そっと、またふたりの方を見れば。
ひとりの神さまと目が合った。
口元に人差し指を持ってく神様と。

まいったなぁ、神様との内緒事ができちゃった!


私にできるのはここにきたお客様に心地いい空間を提供すること!
よし、もう少ししてふたりが落ち着いたらサービスでもしちゃおうかな!!





かみさまにあいされたひと
それはおなじくらい、かみさまをあいしてたひと










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