やさしいかみさま




(FGO×刀剣乱舞)
前世が審神者だったカルデア職員+ロマニ+マシュ




激動の1年を駆け巡って。

そのあとに予想だにしない激情をともなう、でき事が待ち受けていて。


すべてをただがむしゃらに生き延びて。
自分に出来る限りのことをした。


すべてがまるくおさまって元通り、とはいかないけれど。
なんとか平和な今をむかえることができた。


思うことはいろいろあるけれど、やっぱり私の心を大きく占める思いのひとつは―――




やさしいかみさま





「神様って優しいものだと思ってた?」


ふと零した、私の些細な思いを拾い上げて人好きのする―だけど、ちょっと困ったような―笑顔を浮かべて、オウム返しをするその人は。
この激動や激情のきっかけとなる原因でもあり、振り回されてる本人でもあるのだろう。
もっとも、1番振り回されていて被害者と言っていいのはあの子だろうけど。その自覚があるかは別として。


「はい。神様って優しい存在だと思ってました。
もちろん、神性をもつ英霊のみなさんを優しくない、と言ってるわけじゃなくて。優しさよりも強烈さが際立つので…。なんか、こう、うまく言えないんですけど。神様って無償の愛を注いでくれるような温かくて優しいものだと思ってた節があったので…」


だって彼らはただただ優しかった。
優しく温かくて寄り添い、愛おしげに包んでくれていた。
今思えば、たくさん甘やかされていて。大切に慈しんでくれていたのだろう。過保護のようで、でも、心地よく愛してくれていた。
健気で献身的で私の為の厳しさもあって、ただただ無償の愛を注がれていた。


「…ははっ!それはなんて本当に優しい神様なんだろうね。神とは基本的には傲慢で慢心なものだよ。その感性や価値観は当たり前のように人と違う。人がただ心地好く感じることができるだけの愛を注ぐなんて無理に等しいよ」


…この人は神に愛されて求められて、自分という個を犠牲にしてることにも気づかず気づかれず。そんな神の愛を受けた人の言葉はどこか重い。本人はまったく気にしてないのだろうけど。


「もし、人に寄り添い愛してる神がいるのなら、相当無理をしているだろうね。だって、理解しがたい感性や価値観に合わせてるのだから。…ねぇ、その疑問、立香くんにも言ったのかい?」


おもしろい!と言いたげに笑うこの人の感性や価値観ははたして人間よりなのか神よりなのか。


「ええ、言いましたよ。思わず、ぽろりと。
立香ちゃんは、え?優しいよ??って言ってましたよ…」


「まぁ、あの子はそのままをありのまま受け入れて寄り添うからね。それも自然に本心で。…ああ、君の理想の神様に近いかもね」


ええ、ええ、本当にいい子で…。
なんの力にもならないかもだけど、何かあったらお姉さん全力で力になるから…!言ってね…!!って気持ちです、はい。もちろん、マシュちゃんも!
あとですね。理想、というかなんというか。
そうだったから。そうであってくれたから。そうであると思いこんでしまった、というかですね…


「いや、まあ、優しいのは分かってるんですけどね。立香ちゃんを大切に慈しんでるのも分かります。でも、それ以上に強烈で激しくて…猛烈で。さっきも言ったように、もっとぬるま湯に、というか真綿に包まれるかのような優しさだと思ってたので…」


「うーん、そんな神様なんて基本的にはありえないと思うんだけどなぁ…。そもそも愛し方以前に神からの愛に無償、というものがありえないと思うよ。ほら、ここいる神性をもつサーヴァントをみてもそう思うだろう?でもそうだね、そんな神様がいるとしたら。その神様は―――」


―――神としてある前から人と寄り添い、人に愛され、人を愛し、人に創られた。人と在り続けた、そんな神様なんだろうね。







「うーん…、無償の愛…」


ドクターとたわいのない話をして。私の疑問?なんだろうか。その思いについての見解ももらった。
なるほど?彼らが付喪神ゆえ、ということなの??

彼らは優しかった。最初から最後のときまで。
私を愛してくれていた。家族のような存在だった。
私は彼らの愛を無償のように感じていた。
それは違ったのだろうか。


「無償の愛、ですか?」


休憩所で飲み物片手に項垂れていると、マシュちゃんがのぞき込むように声をかけてきた。


「あー…うん。ちょっと神様の愛とか無償の愛とかについて、考えてたっていうか…」


先程のドクターとの会話をかいつまんでマシュちゃんに話す。マシュちゃんはちょっと考える素振りをした後、彼女なりの考えを話してくれた。


「そうですね…これは私個人の見解なんですが…、無償の愛、というのはとても難しいと思います。…あ!決して否定してるのではなく…!!!私にはその愛の形はとれないな、と思ったんです。」


困ったように笑うマシュちゃんは可愛いんだけれど、マシュちゃんこそ無償の愛の化身のような気がするのに…!


「だって、私は、もらってからなんです。全部初めにもらいました。優しさを、愛を、はじめにもらったから。返したいと思ったんです。そして、優しくされたいから、愛してほしいから、もっと私にできることをしたいと思ったんです。だから私のは無償なんかじゃないんです」


大切なものを抱きしめるかのようにそう言ったマシュちゃんはとても綺麗で。みんなを重ねてしまった。


「それに私はレイシフトやその後の旅でいろんな方々と出会いました。状況が状況だったのもあるのかもしれませんが…穏やかなだけの愛、というのはとても難しいと感じました。穏やかに見えても、激しさだったり強烈さだったりもそこには含まれるんじゃないかって」

「それに、神様だって生きているんだって。悩みや問題を抱えてたり、葛藤していて。こんなこと言ったら怒られるかもですけど、人と変わらないとも思ったんです。神様だからどうの、というのは決してないんだと感じました。」


「ですから、あの…私にとっての神様は先輩なんです。だって、ぜんぶ、先輩からだから。私のはじまりは、いつだって先輩なんです。」


先輩はいつだってはじまりだから、先輩の愛は無償なのかもしれませんね。そうはにかみながらマシュちゃんは続けた。

無償でない、という彼女の愛の形は優しくて温かくてとても純粋で。心地いいそれは、まるで私の神様たちの愛のようで。

ああ、みんなもこんな想いを抱えてたのかな、なんて。
みんなと共にあれた時に、もっと彼らの愛について考えればよかったなぁ。当たり前のように受けとるだけじゃなくて。私もみんなに返せていたのかなぁ。


ドクターが言うように、みんながあんなに優しかったのは付喪神という性質があったからのかもしれない。
でも、それでも。
みんなが純粋に私を愛そうとしてくれたこと、愛してくれたこと。
それは間違いない事実だから。



だから、私のとっての神様は今も変わらない


どうか、今の私のことも見守っていてね



私の優しい神様たち












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