取り立て屋トッドの企み




(うたプリ/リコリス) トッド





薄汚くお高くとまりやがった人の仮面を被った下衆どもなんて、反吐が出るくらい嫌いなんですがねぇ。

まるで今の私をみているようで。


口先ばかりで力を持たず、現状を嘆くだけで力もない甘ちゃんどもも、虫唾が走るくらい嫌いなんだよ。

かつての俺をみているようで。




取り立て屋トッドの企み









「ランドルフっ、なんで、なんでなのよ…!!!!」


ランドルフの訃報を聞いてマリーンは取り乱す。
バーナードは驚いてはいたが「バカなやつだ」と興味なさげにこぼしただけ。

ああ、やっぱりな。
なるほどなるほど。私の気兼ねした通りのようだ!
これは愉快。


「うそ、嘘よ!!!!そんなの、嘘だわ!!!!!」


取り乱し泣き出したあと、そういきなり叫びアジトを飛び出していくマーリン。
まったく予想通りで笑いすら起きない。


「バーナード。こんな騒ぎになってはここでの仕事はしばらくは難しいでしょう。今日の夜ここをたちますよ、準備を」
「ああ、商品を回収出来なかったのでかわりに魔術師の心臓をいただきましょうか。」


そう、いそいで準備をしなくては。
巻き添えを食らうのはごめんですからねぇ。


「あ?いいけどよ、マーリンのやつはどうするんだよ」


マーリン?ああ、そういえばいましたねぇ。
そのようなものが。


ですが、


「マーリンはほっときなさい。どうせ戻ってきやしない。戻ってきたところで、使えないものなど必要ないですからねぇ」


そう。同じ汚れた身でありながらお高くとまり、偽善を振りまき己の心を保っていたものなど初めから信用などしてはいなかったのだから。
まったく、おかしくて仕方ありません!
結局は自分より可哀想で憐れなオオカミに依存をしていただけだったのですから!!!

こんな結果になるならまだ自分の生命可愛さに全てを犠牲にしても、決して壊れることのできない病弱な欠陥品の方がまだましか。
…まあ、結局使えないのだから大差ないですかねぇ。



「ふーん?まあ、別にどーでもいいけどな」

―ただ、またふたりぼっちだなぁ!


何も考えていなそうに笑うバーナード。


ふん、そうですねぇ、

「傍におくのはあなたくらい、バカなほうがいいと再確認したんですよ」


信用くらいはできますからねぇ?


「あ?どういうことだよ…!!って、決まってた獲物の買取手は大丈夫なのかよ?だからこその夜逃げか?」


「ああ、いいんですよ。あれは嘘ですから。
まさか私が最悪の場合を考えず、早計に取引をするわけないでしょう。」


そう、決まったなんて真っ赤な嘘。
まあ、もし無事に手にいられていたなら声をかけようと思っていた中の1人に似たような性癖をもつ屑はいましたけどねぇ。



「さぁ!口ばかり動かしてないで、さっさと準備にとりかかりますよ!」










夜更けに騒がしい村を尻目に新しい目的地へと向かう。
ごぉごぉと赤く紅く染まる森。
ああ、この様では村などひとたまりもないでしょうに。やはりいくらお高くとまっても下衆な獣。容赦も品もない。
お頼りの英雄も心を崩したばっかりだ。きっと迫りくる赤から目をそらし、のまれるしかないでしょう。
もしかしたら外れに暮らす、はみ出しものは助かるかもしれませんが。あの身体の弱さでは満足な食糧の確保もできず飢えに苦しむだけでしょう。

ああ、ああ。ほんとうに。





「醜くて汚い」
















☆解説



悪名高き取り立て屋は過去と現在の境遇と自身のあり方から他人が信じられない。
マーリンはお高くとまり偽善をランドルに振りまき依存している。
ランドルフは誰も近づけず独り孤高を気取り殻にこもっている。
いつか自分を裏切るのではないか。
その疑念を試すために今回の仕事を決めた。
あの病弱な兄はつっつけば自分可愛さに必ず弟を差し出す。あのかわいいかわいい太陽のような弟ならば決して怖がらずランドルフに接するだろう。
ランドルフは温かさに触れてどうするだろうか。
ランドルフに依存しているマーリンは変わっていくランドルフを見てどうするだろうか。

ああ、楽しみですねぇ。
どう転んでも対して損はしないのだから。


食い扶持を稼ぐためとはいっても、金貸しに金を借りるのにそんなに膨大な額は返せる宛がないのだから借りられない。
今まで何人かの子どもを対価に受け取った。今回の獲物より額は下がるが、それでもそこそこの儲けはあった。
そしてあの父親はどうしても母親に良く似たかわいいかわいいブラッドは売れなかったらしい。病弱で売り物にならない兄に世話を押しつけて、己の命も犠牲にした。
あれは不格好ではあったが健康な身体であったしそこそこの金にはなった。
その事実をあの兄弟は知らない。
現在の返済なんて利子を返してるようなもの。
獲物を無事に獲得できれば上々。できなかったとしても、トカゲのしっぽ切りができる。万々歳じゃないか!


ああ、ああ。
やっぱりではないですか。やっぱりじゃねぇか!!!!


ランドルフはかわいいかわいいブラッドを己を抱きしめてくれる温もりをとったらしい。
まさか共に死を選ぶとは思わなかったが。
それを知ったマーリンは現実を受け止められずランドルフの元に向かう。無残なその躯をみてどうするだろうか。
あの森をおおい尽くす赤を見るかぎり、村の近くの森に火を放ったのだろう。
きっと勢いをます炎は村をのみこみ、焼きつくすだろう。
マーリン自身が火に飲まれたのか、生き延びたかは知らないが。最後にみたあの様子では壊れ狂ったのだろから、きっと私の邪魔にはならないだろう。


ああ、結局のところ。
バカなバーナードくらいしか安心して手元に置けないではないか。

「バーナード、あなたがバカでよかったですよ」











人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -