貴方におめでとうの花束を




(fate) 切嗣誕 切嗣愛され

切嗣さんにブライダルベールを






無事に、とは少々言いがたいけれど。
あの子たちみんなががんばった結果、最小限の被害で第5次聖杯戦争も終わり
聖杯も崩壊し、解体もきっと遠くない未来に行われるだろう。

そのことによりアンリマユの呪いは消え、蝕まれた身体は治療の甲斐もあって
一応はまだ生命維持ができている。

ろくに何もできないオンボロで壊れかけではあるけれど、一応の寿命ぐらいは生きれるだろう。
ー―あの子たちが大人になるまでは、生きていることができるのだ

それはなんて、幸せなことなのだろう。
無理だと一度は諦めた愛する子供たちの成長を見守ることができるのだから。

もう会えないと思っていた、迎えにいくことのできなかった可愛い愛し子
僕の夢を押しつけ、その理想に押しつぶされ擦りきれてしまった優しい愛し子僕の勝手な意地で傷つけて、分かり合うことのなかった正しすぎる女の子

嫌われ憎まれるのは、避けられるのは当然で。

僕のしてきたことの報いを代わりに受けさせてしまった、とても強い愛し子

それでも僕に笑顔をむけてくれる、少し心配になるくらいお人好しの優しい子

もう少しはやく愛しい人の手をとることができたなら
そうしたら彼女たちを不幸にではなく、幸せにできたのではないのだろうか

世界のではなく、彼女たちの正義のヒーローになることを願えたのなら
今も一緒に笑あうことができたのではないのだろうか

―ー僕だけが幸せに生きていていいのだろうか


「爺さんっ!」

士郎たちは一週間ほど前からそわそわと何かの準備をしいた。
昨日は特に忙しそうで、今日も朝から忙しなく何かをしている。

「ん?どうしたんだい、士郎?」

そんな士郎がどこか焦っている様子で僕に駆け寄ってくる。

「別にどうしたとかはないんだけどさ。今日はいい天気だし、ちょっとは外にでた方がいいだろ?」
―ということで!

「はいっ!これもってちょっと散歩にいってきてくれ」

と言って士郎が僕に渡してきたのは

「えぇぇ…散歩?縁側とと庭にでるだけで十分だよ…。
…この籠はなんだい?」

士郎に渡された小さな籠を見てみると中に一輪の花が入っていた。

「…花?」

「ああ、ミセバヤっていうんだ。さあ、行った、行った!」士郎に背中を押されてしぶしぶ散歩に出かけ、とぼとぼと歩いていると大きな声で呼ばれる。

「切嗣さーん!これあげますっ」

「やあ、大河ちゃん。…花かい?」

「そう!桔梗ですっ」

「ありがとう、大河ちゃん」

大河ちゃんにも一輪の花をもらった。
…今日は何かの日なのかな?


大河ちゃんと別れてまた歩きだした僕は、いつの間にか知らないところを歩いていた。

これって、

「…もしかして、迷子?」

この年になって迷子とか…と少し遠い目をしていると不意に籠を持たない方の手を引かれる。

「っ、なんだ…?!って…、」


手を引かれた方を見るとそこにいたのは―ー

「ケリィ!あげる!」

シャーレイがタンポポを一輪、僕に渡す

「…オシロイバナと言うそうだ」

父さんがそっと一輪を差しだし、

「私のももちろん、受けとってくれるのだろう?」

ナタリアが花菖蒲を籠の中に放り投げるかのように入れる

「…シャーレイ、父さん…ナタリア、どうして」

何が何だか分からない
どうして、みんながここに…

「切嗣、タツミソウです。もらってください」

「私からは胡蝶蘭よっ!」

後ろから声が聞こえ、振り向くと

「まい、や……アイ、リっ!!」


舞弥とアイリがそこにはいて。
2人もみんなと同じように僕に一輪の花をくれる

ねぇ、どうして
ねぇ、なんで君たちは笑っているんだい?

ねぇ、なんで、どうして

僕に笑顔をむけてくれるの?


「切嗣、あなたにどうしても伝えたいことがあるの」

「どうしても今日ケリィに言いたかったことなの。」

アイリとシャーレイはそう言うと顔を見合せ、笑みを深める

「すごいのよ!」

「みんな言いたいことが一緒なの!」


前と後ろにいたみんなは
いつの間にか、みんな僕の前にいて

今度はみんなで言葉を続ける


「お誕生日、おめでとう」

―生まれてきてくれて、ありがとう

「生きていてくれて、ありがとう」

―忘れないでくれて、ずっと私たちを想ってくれて、


「ありがとう」


彼女たちの言葉に、涙があふれて
何か言いたいのに、言わなきゃいけないのになにも言うことができなくて
手をただただ伸ばすだけだった

彼女たちは僕の手をとり、抱きしめて
もう一度「おめでとう、ありがとう」と言うと光って消えてしまった

しばらくしてようやく、涙の止まった僕は周りを見回すと
そこには見なれた玄関が。

「切嗣っ!って、どうしたんですか?!目が真っ赤ですよっ?!」

玄関がいきなり開いたかと思うと、セイバーが飛び出してきた

「………」

「また無視ですかっ!最近少しは会話をしてくれると思ったのにっ!」

「…まあ、いいです。とりあえず貴方に何もないのなら。
それと、いらないかもしれませんが。これをどうぞ受けとってください」

そういってセイバーが差し出したのは一輪の菊の花

「……」

「な、なんですか!何か言ったらどうなんですか?!」

僕はいきなり叫びますセイバーを無視して、差し出された花を受けとる

「………ありがとう」

「え、切嗣…切嗣!いまなんてって、イリアスフィール?!」

また騒ぎだしたセイバーの横を小さな影が勢いよく通りすぎ、僕の前に立った

「イリア…」

イリアは少し不機嫌そうな顔して、一輪の花をつきだす

「あげる!…ネモフィラよ」

そう言って僕に花を渡すとまた勢いよく、家の中へと入っていく。
何か言いたそうにしていたがセイバーもイリアに続き、今度はアーチャーが玄関よりでてくる。

「…シロウ」

「…私はアーチャーだ。これで、目を温めろ。少しは治まるだろう」

アーチャーはそう言うとホットタオルを僕の目に当てたるた

「きもちい…ありがとう、?」

アーチャーが当ててくれたホットタオルで視界は塞がれ、様子をうかがうことはできないが彼が何かを籠の中に入れたことが気配で分かる

「ゼラニウムだ。…少し引いてから来ることだな。衛宮士郎たちがうるさいぞ」

そう言うと彼も家の中に入って行く。
タオルを少し外し籠の中を見てみると花が一輪増えていた。

しばらく玄関でアーチャーがくれたホットタオルで目を温めてから、僕は居間へと向かった。



居間の襖を開けると、そこには

「お誕生日、おめでとう!」

たくさんのご馳走と飾りつけがあって

士郎に大河ちゃんに、イリア、アーチャー、セイバー
凛ちゃんや桜ちゃんもいて


「…今日は、僕の誕生日だったんだね」

「なんだよ、爺さん。忘れてたのかって……泣いてるのか?!」

士郎のその言葉で僕はまた涙をこぼしていることに気づく

―せっかくシロウがタオルくれたのに。でも、

「うん、嬉しくて…涙が止まらないんだ」


なんて幸せな誕生日なんだろう



貴方におめでとうの花束を






*一輪の花言葉

士郎→ミセバヤ<大切な人>
大河→桔梗<優しい愛情>
セイバー→菊<私を信じて>
イリア→ネモフィラ<私はあなたを許す>
シロウ→ゼラニウム<尊敬と信頼>

シャーレイ→タンポポ<真心の愛>
矩賢→オシロイバナ<あなたを思う>
ナタリア→花菖蒲<あなたを信じてます>
舞弥→タツミソウ<私の命を捧げます>
アイリ→胡蝶蘭<あなたを愛しています>












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