眠らずに夢を見ることは難しい




(P3) 主人公←アイギス





夢を見ているみたいだ、と思った。


まるでまどろみの中にいるみたいで。


ぼんやりと、でも意識はどこかはっきりとしていて。

夢を…見ていたのではないだろうか、と思ってしまう。

私は夢をみだことがないけれど

もし、これが夢だというのなら

あの日々がすべて幻だったというのなら


「もし、すべてが夢だったら…」


―嗚呼、なんてひどく残酷な夢なのだろう。


彼と彼らと過ごしたあの日々は

私にとってとても大切な宝物で。

みんなと過ごした時間は、私が私になることができた

とてもとても愛おしい記憶。


彼と出逢って、はじめて。

人間というものに触れ、感情というものに戸惑った。

愛おしい、という気持ちを知ったの。


私ははじめて私になれた。


まるで夢のようだった。

とてもとても幸せだったの。


そんな時間がずっと続いていくのだと思ってた。

あの日常をこれからも過ごしていくのだと信じて疑わなかった。


でも貴方は分かっていたのですね。

私たちはそんな貴方に気づくことができなかったけれど。



私はそっと手をのばし、


「…おやすみ、なさい」


安らかに眠る貴方に優しく触れる。



―おやすみ、愛しい人



私は私になって、はじめて。

人間の残酷さと美しさを知ることができた。

人の素晴らしさを知ったの。


「…ずっと、傍にいます。」


貴方の眠りを見守り続けることはできるから。


「―私の、大切は…貴方の傍にいることです。」


私は夢をみることはできないけれど

貴方のみせた夢をみることはできると思うから。



貴方が見せた残酷で美しい夢を見届け続けます。





けれどやっぱり、私は眠ることができないから

眠らずに夢を見ることは難しい







title:Aコース









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