不愉快さえ、愛おしい




(drrr) 臨帝




俺は今、帝人くんを背中から抱き込んでいる
帝人くんの背中が俺の胸板にぴったりとくっついている

俺達は付き合っていて恋人同士なわけだし、甘い空気にになってもいいはずなのに

この子供は空気を読まなくて困る(お前にだけは言われたくない、という声が聞こえてくる気がするけどもちろんスルーで)


「…臨也さん、いい香りがしますね」


「俺はいつでも素敵な香りだよー?
…この香り、好き?」


「…素敵、とは言ってません
嫌い、ではないですね。でも、静雄さんの香りは好きです」


……なんでシズちゃん?
普通さ、彼氏の前で別の男の名前出す?出さないよね?
しかも、俺が大っ嫌いなシズちゃんの名前
…あぁ、シズちゃんじゃないけど名前聞くだけでイライラする不愉快だ


「…じゃあ、さ、気持ちいい?
俺に抱きしめられて、気持ちいいでしょ?」


「気持ち悪くはないですよ、
でも静雄さんに頭を撫でてもらえると気持ちいいです」


何なの!?何なの、何なの!
だいたい、あれが撫でるなんて出来るわけないし!力いっぱい掻き混ぜるように頭を触られてるだけでしょ?!
というか、俺以外の男それもシズちゃんなんかに触られないでよっ!


「っじゃあ!顔は?!
俺とシズちゃんどっちが好き!?」


「何を必死になってるんですか…
顔ですか?臨也さんの顔好きですよ、でもどちらかといえば静雄さんの方が好きです
というか、憧れます」


なんか、"シズちゃんが好き"と告白されてるみたいなんだけど…
すごく、不愉快


「…さっきからさー、なんなの
別れてシズちゃんと付き合いたい、とか言い出す?別れないよ、シズちゃんになんて渡さない
他の誰にも渡さないよ、絶対に離してなんてやらない」


「…違いますよ、言い出したりなんてしません
別れるつもりもありません
でも、大切なんです」


帝人くんはどこか遠くを見ながら言葉を続ける


「大切で大切で、大事にしたくて
傷ついてほしくない、哀しまないでほしいんです、
幸せになってほしい、幸せでいてほしい、…笑顔でいてほしいんです」


「幸せにしたい、とは思わないんです
幸せになってほしい
僕では幸せにできないだろうし、静雄さんを幸せにするのは僕以外の誰かなんだと思います
僕が幸せにしたい、とは思わないんです」


「でも別に臨也さんを幸せにしたいとも思いません
幸せにしてほしい、とも」


静かに帝人くんの言葉に耳を傾ける


「幸せになりたい、とは思いません
幸せじゃなくていいんです、
ただ…傍にいたいんです」


帝人くんを抱きしめる腕が強くなる


「たとえそこが地獄でも貴方といれればいいんです
ずっと傍にいれればいいんです
幸せも愛しさもいらない、何もいりません」


「貴方と共にいられればいいんです
貴方の傍にいられるだけで、」


思わず、帝人くんの口を塞いだ
頬に手を添え、唇に蓋をした





不愉快な戯れ言さえ、君の言動一つで愛おしい







「どこまでも、堕ちて逝こう―…」

ずっと共に、永遠に傍らで

どこまでも、一緒に










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