雪に咲いた、紅い花




(花帰葬) 玄花 玄人死後




綺麗だ、と思った
白い、白い雪に咲いた、真っ赤な紅い花
それは、誰の紅い花だったかな
僕らを邪魔する奴らのだったっけ?

それとも、君の?
……僕、のかもしれない。

でも、綺麗だと思ったのは覚えてる。








雪に咲いた、紅い花









僕の、寝起きは最悪だ
機嫌が悪いのだって、自覚はある

でも、とくに今日は最悪だと思った


…夢を、見たから
とても、綺麗な色の夢
白と紅の綺麗な色の

でも、それは僕にとっての悪夢だった


ゆっくりと、重たい瞼を開く
その開いた先に、見たものは


「……し、ろ?」


真っ白な天上


周りを見てみても、目に入る色は白だった
気が滅入るほどの、白を基準とされた部屋

白以外の色は、
白い窓と白いカーテンの向こうに見える春を感じさせる色と
白い窓辺の近くの白い小さな机の上に置いてある、白い花瓶に生けられた春の桃色の花の枝

そこに、僕はいた。


(ああ… ぼく、は…)


冬が明け、春の香りがする、ことを意味するのは

それは……


(君は、もう…どこにもいない?)


力無く両手を顔に被せ、声を…音を殺し、力無く涙を流す


(僕に、君を想って、泣く権利なんて… あるの?)


ふと、見えた包帯

僕の頭に、首に、手首に、腕に、肩に…… 所々に巻かれた包帯

弱々しく、包帯をほどく
その下には、痛々しい傷跡


(…赤、朱、緋、 …紅)


(あかい、いろ)


白に咲いた、紅い花

雪に散った、生命(いのち)の色

白を染めた、紅い色



その紅い色は

   君と 僕の色だった…







「くろ、と…?」


呟くように、小さく紡いだ、君の名前

その音に、返ってくる声はなくて



かわりに、白い窓辺から温かくて優しい風が白い桃色の花びらを運んできた



まるで、

   生きろ、と云うように





(君は、最期の最期まで残酷だ)


(君のいない世界で、生きろというの?)


(僕には、君しか… いないのに)


(何を犠牲にしても 君に、生きていてほしかったのに)


(君と、一緒に生きたかった…)


(僕は、 君が…)




――‐ねぇ、玄冬

     これだけは信じて





「大好き、だよ 玄冬…」





世界で1番、君が好きだよ






















((花白、俺の分も生きて幸せになれ))


((お前に会えて、よかった 花白))


((……また、会おう))

                                   








((花白、俺もお前が好きだよ))











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