あなたを愛してみたかった
「馬鹿だな。」
彼女を憎めも恨めもしない、嫌いにだってなれない俺を
君は呆れ、馬鹿だと吐き捨てる。
「分かっているけど、酷い言われようだ…。」
だけど、どうしても彼女を嫌いになんてなれないんだ。
哀しそうに、微笑んだ彼女を。
「分かっているなら文句を言うな。
お前が悪い。」
自業自得だ、と吐き捨てられる。
「やっぱり、俺が悪いのかな。」
「…お前だけの責任ではないだろう。基本的にはあの女が悪い。
だが、ご覧の通り酷い有り様だ。お前たちのせいでな。」
先程からの酷い言われように笑って誤魔化すことしかできない。
「あの女は裏切り者だ。」
「…俺は、俺達はあれを許さない。」
「だが、…同情はする。」
それは君も知っているから。
彼女の哀しそうな微笑みも、
悲痛に告げた…あの言葉も。
「まったくもってお前に同情の余地はない、が。
…まぁ、ある意味では同情してやる。」
たぶん、君が一番呆れているのは
そのある意味においてなんだろうね。
あーあ、本当に
「…耳が痛いや。」
“あなたを愛してみたかった”
―俺も、愛してみたかったよ。
title:確かに恋だった