サービス利用不可。サービスが一時的に過負荷やメンテナンスで使用不可能である。
例として、アクセスが殺到して処理不能に陥った場合に返される。



たかだか十何年生きただけである。東峰と名字、見た目はまあ似ていると言ったら似ているが性格は正反対。そんな二人を俗にいう中の人であるわたしが解いていこう。

年頃の娘よりも華麗に装飾された外見を持つ名字は巷でビッチと言われていた。交際していた男はアルバイト先の店長というよくある話であり、 清く美しい交際を続けていても後々についてくるのはアレである。名字も覚悟よりも受け入れる準備を着実に進めて、いざ、決戦の日。名字は清純を失い、男は初めて貰ったことに恍惚と浸たり、中古車に乗り込んだ瞬間だった、名字の通う学校の教師が嫁とは違う女とハートと飛ばし合いながら出てきたのだ。互いに他人を貫きその日は終えるが、大人というのはずる賢く、時には自分のことを棚にあげる時もある。胸騒ぎが静まったある日、名字は生活指導の教師に呼び出され通告されたのは停学だった。名字は羞恥心から普段の屈強な身振り素ぶりも出来ないくらい名字は絶望にひしがれて、過ぎたことに後悔をした。名字がトボトボと帰っていく姿に何事かと興味津々になるのは年相応の事、小耳に挟んだ余計なことをするのは天下一品であるお調子者は名字を更に絶望へと追いやった、名字が男とヤッているところを先生にバレた!と語弊だらけではあったが、同じクラス、はたまた学年、他学年、噂が噂を呼び、語弊に嫌な色をつけて歩かせて、課題だらけで腱鞘炎になった右手をプラプラとさせた名字を待ち構えていたのはビッチという阿呆なあだ名と好奇が含まれる視線だった。理解力のある友人は誤解を解こうと奮起したが疲労困憊していた名字は、馬鹿馬鹿しい、好きにさせておけばいい、と言い退けた。それから一年程経った今日も名字のビッチ説は根強く残っているが新鮮さを失い神格化される始末、全くをもって皮肉である。

「東峰くん、名前見てない?」
「いや、知らないよ」
「そっか、何処だろ、また変な呼び出しかなあ」
「あー…」

東峰と名字は中学から六年間もクラスが一緒である、男子バレー部に所属している東峰は東峰で名字よりもタチの悪い噂が尾鰭をひいていた。名字は知らないのか、揶揄することなく、同情することもなく東峰と友好を深めていった。気と正義感が強く、血の気はあるものの他人を貶したりしない名字に始めは羨望を抱き、そして特別な感情へと変化を遂げていたことに気づいたのは最近の事、とてもピュアである。その証拠に名字がビッチと後ろ指を刺されれば心を痛め、屈しない名字に安堵しつつも心配になり、近所で買った駄菓子を片手にありふれた話題で笑わせようとしている。名字の友人のように誤解を解こうと立ち上がりはしたものの争い事から避ける平和主義の性格が災いして未だ動けずじまい。しかし、クラスに戻ってきた名字を見て東峰は立ち上がる。二つの目に引かれたしなやかな線は縒れ、睫毛につけていた繊維は目の下にはらはらと落ちていた。あぁ、泣いたのだろう。友人が察するよりも早く東峰は名字の手をひいて人影のない校舎の隅へと足を運ばせた。

「なにすんの!」
「…あ、いや…そのさ…えーっと」
「言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ」

目を釣り上げる名字にやってしまったと東峰は血の気がひいていく。周りから、今度は東峰の番かと後ろ指を刺されるのではないかと不安にもなる、こんな成りでも人目は気にするのだ。特に目立つ二人だっただけに仕方のないことだった。

「なにもないなら戻るけど」
「なにもないことは…ない」
「じゃあなに?」
「それは…」

キーンコーンカーンコーンとベルは鳴る。過ぎたことを後悔して必死に平然を装うとする東峰に名字は大体の事は察するが名字は名字で東峰の性格をよく知っている。心優しくもあったが気弱な東峰に慰められるなんて自分はまだ落ちぶれていない、とプライドが許さなかった。適切な理由を選ぼうとしどろもどろする東峰に痺れが切れたのか沸々と湧いてくる怒りに身を任せて頬を叩く。驚きから目を見開いて思考が止まる東峰に頭に上がる血をなんとか正常に戻そうとする名字の口からは息が荒々しく漏らす。

「アンタに慰められるなんてまっぴらごめんよ!」
「そ、そんな!」
「じゃあ、他のヤツらと一緒?このままどっかでヤろうって!」
「そんなことない!」

東峰の口からは予想以上に大きな声で出て二人して呆然とする。しまった、と慌てて冷静になろうにも名字は目を潤ませていた。消え入りそうな声で東峰に問う。じゃあ、なんなのよ、と閑散とした隅で目を怒気を含ませて東峰を名字を睨みつけるのに普段の東峰なら怯んだだろうが、この時だけは違った。

「好きな女の子が悪く言われるのに黙って見てられないんだよ!」

キーンコーンカーンコーンともう一度ベルは鳴る。状況を理解出来ずに予め用意していた言葉も吐けない名字を置いて東峰は元来た道を駆け足で戻る。ちょっと!と制しても現役バレー部、しかもエースである東峰に追いつくなんて帰宅部である名字には不可能だ。風が吹き、顎まであるゆるくパーマのかかった髪が口に入る。払う事も出来ずに名字はただ呆然と東峰が言った想いを反芻しては頭を抱える。

「なんなの、アイツ」

その頃、勢いに身を任せてあまさもへったくれもない告白をしてしまった東峰は上気して熱の孕む身体を鎮めるために近くの男子トイレ、しかも個室に逃げ込む。東峰は東峰で自分がしたことの重大さに頭を抱えた。これから先、どういう顔で会えばいいのだろう。しかも名字には彼氏がいるのに、と。最後に一つだけ、二人は忘れている、もうチャイムは二度鳴り響いてから幾分も時間は経っていることに、五限目はとうに始まっていた。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -