将来のために予約されている。


通された客室で紅茶を飲んでいれば、ドアがノックされてにっこり顔のエルンストがこちらを見ていた。

「アインス王子をお待ちですか?」
「だったら、何…?」
「政略結婚だって分かっていて、なんで来るんですか?」
「…っ。そんなの私の勝手でしょ…」

エルンストに本当のことを言われて、ズキリと胸が痛む。
私の住んでいる国は活気に溢れており鉄鉱石が多く取られることで有名で、グランツライヒ王国から結婚の話を持ち出されると、それが政略結婚だと知りながらも私の父上はOKをした。そして、私はアインス王子のためと言われ、昔から色々な習い事をやらされて、昔は嫌々ながら受けていたが、アインス王子に会い一目惚れをして今では習い事は苦にならなくなった。

「勝手ですか。まぁ、名字様には一応、伝えておいてさしあげますか」
「な、何よ。伝えることって…」
「アインス王子には、もう意中にしている女性がいるみたいですよ」
「えっ…」

エルンストに耳元で言われて、持っていたカップを床に落としてしまうのと同時に、公務から帰ってきたアインス王子が客間に入ってきた。エルンストは私の元を離れて「失礼しました」と軽く会釈をして、即座に客間を後にする。カツカツという靴の音が聞こえて、アインス王子がこちらへやってくるのが分かった。けど、今の話を聞いたことで、アインス王子のことを見られるわけない。

「どうした…」
「な、なんでもないです」
「ふん。そうか…」

そういって、アインス王子は私の隣に座り客間に置いてあるティーカップに紅茶を注ぎ飲み始める。話そうとしても話す言葉が出て来なく、二人の間に異様な空気が訪れ始めて。全部、私のせいなんですけど…。やっぱり、エルンストが言っていたアインス王子の意中に決めている人が気になる。よし、ここは思いっきて聞くか。

「あ、あの!」
「なんだ」
「アインス王子って、その」
「なんだ」
「す、す、す」
「す?」
「好きな人っているんですか?」

言ってしまった。私はアインス王子を見ると、一瞬考えたような素振りをして、一言「いる」と言って、また紅茶を啜った。やっぱり、いたんだ。私じゃない好きな人が…。そう思うと、また胸の奥がズキン。と痛んで、涙が自然と溢れて私の頬に流れ始める。

「どうした」
「やっぱり、好きな人いたんですね」
「あぁ」
「私じゃなく、その人と幸せになってください。父に婚約破棄のこと伝えておきますから。じゃぁ、これで」

涙が流れ出てても、笑顔で会釈をして、客間を出ようと私は立ち上がる。あぁ、グッバイ私の初恋。次の恋に期待しよう。私が歩き出そうとしたら、アインス王子に手を掴まれた。

「どうして…」
「どうしてじゃない。何か一つ勘違いしていないか」
「えっ…と」
「好きな人とは、名字お前のことだ」

そう言って、アインス王子は私のことを引き寄せて抱きしめられた。驚いて顔を見ようとして顔を上げれば、少し照れているアインス王子の顔がそこにあり。新鮮で笑ってしまう。

「何が可笑しい」
「だって、照れていらっしゃるんだもん」
「告白したのが名字が最初だからな」
「嬉しい。アインス王子の一番になれて」
「あと、呼び方」
「ん?」
「アインス王子ではなく、アインスと呼べ」
「分かったよ。アインス」
「あと、」
「ん?」

私を抱きかかえ客間のソファに座らせると、アインスは私に傅き左手にダイアモンドが埋め込まれた指輪をはめた。

「私は政略結婚という物ではなく、一人の女性として名字と結婚をしたい。受け入れてくれるか?」
「は、はい。私もアインス王子を一人の男性として結婚したいです」

私は傅いているアインスにキスを送る。今日は私にとって最高の一日です。
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