※HGSS軸


二年程前からのブームは、何とはなしにあまり行かない町に足を運ぶことである。
今日はラジオ局以外は目立たないシオンタウンにやって来て、フジ老人の話を聞いた。わたしが旅した頃のシオンタウンは常におどろおどろしい雰囲気と悪寒が漂っている町だったけど、小さな花畑ができて穏やかな雰囲気がちょっぴり見えるようになっていた。ポケモンタワーが無くなったのも大きな要因だろうか。何ともまあ嘘か誠か分からないお話を聞かせてもらい、かなり前のジム巡り兼図鑑埋めの旅の時にそれを字面でどこかで見たことを思い出して同時に懐かしいと想起していた。ミュウを見たという話はそれはそれで面白かったので、お礼を言ってシオンタウンを後にした。

「えっとー今日は……この後は何が良い?」

モンスターボールから出したミズゴロウを腕に抱きしめながら、何気なく聞いてみる。いつものように一鳴きして、腕の中で眠り始めた。最近ダイゴというシルフカンパニー内で出会った人からもらったポケモンだけど、マイペースを極めすぎてわたしの言葉は届いているのか不安になってくる。それでもホーホーとのバトルの際には、目をキリっとさせて戦闘に臨んでいたから全てに対してやる気はないことはないんだろうけども。

「おい、名前」
「あ、グリーン。こんにちは」
「こんにちは、じゃねえよ。今日は俺と出かける約束しただろ、約束の時間から何時間経過したと思ってんだ」
「こんな時間だったんだ、ごめん」
「いつもその言葉を聞いている気がするんだが……」

目の前にピジョットが急降下してきて、その背中からばっとグリーンがやけにスタイリッシュに降りて来た。彼の言葉に気付いて、ポケギアを取り出して時間を見る。確かに約束の時間から二時間経っていた。フジ老人の話が長かったことも物語っていて、一瞬戦慄した。
彼は幼い頃からレッドとわたしと遊んでいて、付き合いの最中にはカロス地方に学びに行ったり見下しているセリフを吐いたりしていた。ジムリーダーになった今でも時々会っては出かける。どこに出かけるかは知らないから、任せるがままの状態だけど。
ピジョットをモンスターボールにしまいながら、呆れた目線を送ってきた。その目線に対して、乾いた笑い声で応戦するも頭をがしがし掴まれるように撫でられた為に意味を成さないと思い知らされた。それよりわたしが大きく揺れているのに、腕の中のミズゴロウはぐうすかと眠っていることにある意味驚愕した。

「レッドと約束した時もバトル以外だとやる気ねえし、名前はどれに対してもノロすぎる……お前たちは約束をなんだと思ってんだ」
「だから、ごめんって」
「薄い謝罪だな、紙みたいにペッラペラだぜ?」

こっちもその言葉を何回も聞いた。前は違って「名前の謝罪の意味はあるのか?」だった。そう思われても言われても、その感情に対しては何とも思わなくなっている自分は麻痺しているんだろうか。

「えっと、今日は……タマムシシティにできたお店に行くんだっけ?」
「覚えてくれているだけでも、感心しているオレは平常じゃないよな……」
「平常だよ。さささ、行こう」

たまたま歩いた草むらで出会ってゲットしたエアームドをモンスターボールから出して、その鋼のボディの背中に乗る。最中にタマムシシティに行くことを告げると、金属音を擦ったような音を立てながら両方の羽根をはためかせた。隣のグリーンも再びピジョットをくり出し、同じ場所へ向かおうと指示をしていた。

「オレとの約束をすっぽかそうとしたこと、忘れんなよ」

ビシッと人差し指を向けられた状態で言われる。それはそうだと言い返せないでいるけど、何だかんだ言って今回もちゃんと見付けてくれている辺りは面倒見は良いのでそれに甘えている節がある。
いまだぐうぐうと眠るミズゴロウを抱え直し、浮遊して飛んで向かう中でその感情を洗い流そうとする。そんなこと思ってたってバレたら、ピジョットの主人にきっとそれに関してたくさん言われそうな気がしたから目的地に着くまでに潰さなければと空の中で専念することになっていた。


/私のために困ってほしい
タイトル:ユリ柩さま
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