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「うっわーー!すごい道だー!」

「がたがた〜!」

家から車で約3時間程たった正午頃。

「ほら、また急カーブだぞ」

「キャー!」

パパが嬉しそうにハンドルを回すと、遠心力で体に圧がかかる。横に座る妹が雪崩れてきて、二人できゃあきゃあとはしゃいでいた。

「ママ、あとどれくらい?」

「キャンプ場までもうすぐね」

「私が火起こす!」

「テント張ってからだぞ」

「え〜めんどいー」

家族とキャンプなんてだっさいと悪態ついていた昨日とは打って変わって。別に家族と旅行に行くのは嫌いじゃないし。
我が家は数年に一度、家族サービスで格好つけたいパパがよくキャンプやらコテージに連れ出してくれる。
旅行先までのドライブは楽しいし、お菓子を沢山食べてもあんまり怒られないから実に楽しい。

「またカーブだ!」

「あはは!うねうね〜」

都心から離れ、気付けばあたりは緑に囲まれた山々。
山道はぐねぐねうねうねがたがたと急なカーブが続き、アトラクションに乗っているような気分で妹とはしゃぐ。
天気もいいし、妹も久しぶりのキャンプで気分上々だし、明日は川で釣りしたい!

「二人ともつきましたよ〜」

「「いえーい!」」

絵に描いたような仲良し家族の車はスピードを緩める。
山道を反れて小道にはいると、随分と開けた場所に入る。仮設トイレとシャワー、コンクリートの水場と年季が入った看板。
よくある普通のキャンプ場だ。行楽シーズンな事もあり、キャンプ場にはすでに幾つかのテントと焚火の煙。

「にぎわってんなー」

「もちょっと奥いこうよ!」

「んー」

新しい車がきたぞ、と人々が視線を向ける。BBQ途中の若者集団がビール缶片手に肉と煙草。こーゆー所ってパリピ的な若者集団が無意識に気になるよね。
パパとママもそれをわかっているのか、人気が少ない奥へ奥へと車を進ませる。奥へ進み、テントの数がぽつぽつになってついに行き止まりに。

「水場から離れるけど、この辺にするか」

「いいんじゃない?ほらパパ、そこの横道おりれば川みたいよ」

「いいじゃいいじゃん!」

水場から離れたけど周りによそのテントもないし、川に近いならむしろラッキー。

「よし、荷物降ろして」

わ〜い。車が止まり、両親がシートベルトを外す間に私は妹と車を飛び出した。

「妹!川見に行こう!」

「こら〜二人共手伝いなさい!」

「すぐ戻るからー!」

この先河原、と矢印がかかれた看板目掛けて妹と小道をおりる。
後ろから両親の叱咤。それよりも川を見たいと好奇心が上回り、木々が茂る小道を転がるように走る。
木漏れ日のチカチカが無くなった瞬間、目の前が開けた。残暑が残る太陽光を水面が反射させ、その場所はキラキラと光っていた。

「おおーすごい!」

「魚いるかな!」

「妹、もどろ!テント張ってから遊ぼ」

「え〜」

このままここにいたら遊んじゃう!
今にも靴を脱ぎだしそうな妹の腕を引き、車に戻ろうと元来た道にUターン。

―ガサ

(ん?)

違和感を感じ、思わず勢いよく振り返る。

「お姉ちゃん?」

「…今、向こう岸に」

川の向こう岸で何かが走った様な影、を見たような。
ぽかんと向こう岸の草陰を見つめる。あっち側はこちらのキャンプ場より拓けておらず、ぼうぼうに草木が茂っている。
今のは鳥?にしては大きかったような…猿?

「猿だ!猿いたよ!あっちに!」