「名前ー、ヨー/カ/ドーのゲーセンに新しい機種が入ったって!」
4時限目の授業が終わり、チャイムが鳴り終わるのと同時に前の友達が振り向いた。
彼女は空いている日、駅前へプリクラを撮りに行こうよ、と続ける。新しい機種は目が最高にでっかく写るんだとか。最高じゃん。
「ごめんー無理だ―」
「えぇ、一日も空いてないの?シルバーウィーク」
季節は9月。9月と聞くと秋が始まるなんてイメージしちゃうけど、吸い込む真昼の空気は8月の味がする。
楽しかった夏休みから早一ヵ月がすぎ、休み疲れの体に日々の学校お疲れさんとばかりにお国から甘やかしの三連休。
「家族で山にキャンプへ行くこととなりまして…」
「あー言ってたね。いいじゃん、どこ?」
「高井山岳…」
「へえ〜何県?遠いねー」
じゃあ、違う子と行くか〜と友達が校内では使用禁止のスマホをポチポチ。いいな、うちは中学上がるまでケータイ買ってくれないから。
同じ仲良しグループの空いてる子へラインしている様子にむ、と口を曲げて頬杖を突く。
「家族でキャンプなんて、めんどいっつーの」
大した威力もない不平を同意してもらいたくて悪態をつく。
そうだよ、来年中学生なんだし家族で仲良くキャンプなんて、だっさいの。夏休み散々家にいたんだから、なんでシルバーウィークにキャンプなんか。
仲良しグループのプリクラや写メに、この三連休は登場できないなんてハブみたいでヤダ。
(なんて)
なんてね。
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