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「いくつ?」

「…数えで十三」

「数え?」

「…」

「今小6?中一?」

戦や隠密に明け暮れる毎日に、人との会話など不要だった。
忍びが人間としての特徴を多くに知られるのはあまりよくない。故に自分の素顔や声等は生きている内、必要ないのだ。
ないのだが…。

「小太郎って呼んでいい?」

随分と。

「その、目に着けてるお面?外してほしいな〜」

この時代の。

「いいじゃん、えい!」

この時代のおなごは、図々しい!
名前は悪戯に手を伸ばす猫のように、俺の額あてを狙う。
慌ててその手を避ける。そんな動きなど簡単に見えるが、素顔がばれてしまう!と忍故の隠し事に少し慌ててしまった。

「習わなかった?人の目を見て話しなさいって」

「…」

「小太郎はちゃんと学校行ってた?」

「…?」

「ん〜、腕ムキムキだから体育大学付属中とか?なんかの選手なの?新体操?」

(こんなおなご)

俺の時代にはいなかった。この時代のおなごは皆こうなのか?男に対してこんなに図々しく、みっともなくころころと表情を変えて。
やはり、里には戻さない方が…?俺の事が里にばれてしまえば、この生活が壊れてしまう。
過去の忍が発達したこの時代にいるなんて、ばれてしまえばどうなる。
もし、もう戻れないなら、俺は静かに隠れていたい。絶対に、この時代になじめないのが分かっているから。

「…」

「ん?」

「忍びだ」

「……は?」

おなごが拍子抜けた顔をするから、分からせるつもりで小さな殺気を匂わせる。じり、とひとつ、おなごへ身を近づける。

「え…ぇ?」

小さな殺気を感じたのか、おなごもじり、と後ずさる。

「なに、言って」

「……」

額あての下で目を怪しく光らせる。
殺しはしない。この時代では殺してしまうと罪になるようだから。では、このおなごをどうすれば…。

「こ、たろうは、一体、本当になんなの…」

慎重に言葉を選べよ、と釘を刺すための小さな変化におなごも動揺しているようだ。が、このおなごとの出会いがきかっけとなるのか?もしかして俺を、助けてくれるのか?

(もしかしたら)

この時代にとって俺みたいな奴は珍しくないのか?
得体のしれないであろう、こんな俺に軽々しく口を利けるのだから、もしかして。

「…俺は忍だ」

「……はい?」

「……」

やばい、この子頭いっちゃってる。
おなごの顔にそんな言葉が浮かんでいるのが見えて、ここに来たばかりの時の不安感を思い出した。
しかし、おなごの次の言葉に希望が見えた。

「……だから、あんな動きが…」

「……」

「あんな動き、人間じゃ無理だもの。普通じゃ…」

そうだ。俺は人間ではない。命じられた通りの動きができなければ、死ねばいいのだ。

(だが…)

今はもう、命じられる事はない。死ねばいいのに、まだ、生きている。
生きなければいけないのだ。いつか当主の元へ戻り、再び命じられるために。

「……」

「俺は、過去から来た」

ぽつぽつと言葉を繋げて文にしていく。
俺が言葉を発するたびに、おなごの顔が呆然とした表情になっていく。
この場所は元いた場所より発達している事。

「タイムトリップ…?」

人里に降りたときの己の異質感の事。

「まさか、そんなのあり得ないよ。映画の中のファンタジーだよ」

ここでの生活の事。

「ずっとこの山で?一人で?」

俺が忍だと言う事。

「…人、殺したことあるの?」

帰り方を知っているか?

「…俺を、助けて…」