novel | ナノ

※学パロ

「きみはいつもそんな顔してるの?」

初対面はこんなんだった。初っぱなから最悪な出会い。キライだ、ツワブキダイゴという男。

しかもキライ、と面と向かって宣言してからは毎休み時間の度に教室にやってくるなんて、はっきり言って……変態だ。

「なまえちゃん」
「また来たんですか…ダイゴさんて一体何年生なんだか、私にはもはやもう分かりません。同い年でしたっけ?でも精神面を考えると私より下ですよね」
「相変わらず毒舌だなぁ。きみこそ変わらないね」
「失礼ですね、ダイゴさんって。私はあなたとは違ってきちんと年相応に成長してます」

胸を張って言えば、いっこ歳上なんて認められないくらい幼稚な先輩はまた、へらりと笑った。

「成長してるのかぁ。それは楽しみだな」
「……何がですか」
「え、だって心も体も成長期なんだろう?特にむ」
「はい先輩チャイムが鳴りました、さっさと上の階に戻ったらどうですかさようなら。というかセクハラで訴えますよ」
「はは、冗談だって」

ダイゴ先輩はまたまたへらへらと笑って、ひらひらと手を振った。ダイゴ先輩はとにかくよく笑う。それが、彼が変態のくせにモテる原因なんじゃないかなと私は勝手に推測していた。

先輩の笑顔は、悔しいけど暖かくて元気になるのだ。

「じゃあ僕のなまえちゃん、また来るからね、50分後に」

…なんて、こんなこと言ってる先輩には、絶対に言ってやらないけど。50分後だなんて、また間休みに来るつもりなのか。

「誰が『僕の』ですか。それに来なくていいです、謹んで遠慮します」
「照れちゃって、素直じゃないなぁ」

そんなところも、好きだけどね。先輩がにこやかに行って教室の扉を出ていくと、とたんに教室がどよめいた。

……疲れる。

懲りずに真偽を聞き出そうとたかってくるクラスメートに内心ため息をついて、私は自席に座りながら吐き出した、ついこぼれた吐息とともに。

「先輩のあれは、単なるお遊びだから」

私をからかって遊んでいる。先輩は、私が先輩に惚れるはずないと高をくくっているからあんなに真面目な顔してさらりと恥ずかしいことが言えるんだ。

私が死ぬほど先輩を嫌っている、と彼に言ったから、彼は面白がっている。言うならばゲーム感覚。

いくらダイゴ先輩がきれいな顔だからって、いくらダイゴ先輩がかなりモテるくらい好い男だからって、いくらダイゴ先輩の笑顔が私を元気にしてくれるからって、……絶対、好きになんてなってやらない。

「…キライ、なんだから」

自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

『いつもそんな顔してるの?』
『は?』
『だからさ、いつもそんな仏頂面してるの?もったいないよ、可愛いのに』
『は……!?か、かわ…!?』
『うん、僕の好みだ。ほらそんな風に、びっくりした顔もね』

笑えばいいのに。

そう言って笑ったのは、彼の方だった。




(分かってるんだから)(本心じゃないことくらい)

Thanks;rim
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