novel | ナノ

※学パロ


軟派なチャラ男、というのが私からグリーンへの評価であり、与えた称号だった。

幼なじみってほどではないけど腐れ縁って単語は当てはまると思う。なんせ小学生の頃から一緒にいるんだから、大体の素行は知っている。もちろんお互いに。


「よ、インケンななまえちゃん」
「相変わらずだね、タラシのグリーンくん」


放課後、珍しく誰もいない廊下で鉢合わせた私とグリーンは、おおよそ1週間ぶりの挨拶を交わした。

いくら腐れ縁って言ったって、ずっと同じクラスなわけがないし、高校生になろうものならそれこそ何百人といるなかのひとりになるわけで。私たちも昔に比べればずいぶん疎遠になったほうだ。


「聞いたよ、彼女フったって。これで何人めだっけ……100?1000?」
「あほか」


1000人も付き合えるわけねーだろ、とうんざりしたようなつっこみをするグリーンは、今日は体裁が悪いらしい。こんなに張りのないつっこみをするようなやつじゃないのに。

むしろ、世界中のかわいい子の数だけ、とか、そういうくっさいこと平気でいうようなやつなのに。


「じゃ、100人はいるんだ。わー、すごいね」
「……」
「あれ、どうしたんですか、グリーンくん?」
「……別に」
「別にって……」


ふとグリーンの様子がおかしいことに気づいて、私はからかうのをやめた。微妙に目を逸らしたままのグリーンは、口を結んだまま何も言わない。


「具合でも悪いの?」
「いや、…あー…まぁ、そうなるのかもしれねーな」
「かもって」


ものすんごく釈然としないグリーンに痺れを切らして距離をつめようとしたら、後退りされた。


「ちょ、なんで逃げるの!?」
「なんでもねーよ、だから近づくな!」


強い否定の言葉にぐさりときて、私は足を止めた。さっきより距離の開いた先でグリーンがちいさく息を呑む音が響く。それが廊下の静寂を強調させた。


「…グリーン、大丈夫?」
「……あぁ」
「なんかおかしいよ?」
「今更だろ」


自虐的に笑うグリーンが、廊下の窓から空を見る。私はその横顔を見て、窓の外を見て、またグリーンに視線を戻した。横顔が固い。

まるで緊張してるみたいだと思ったら、私も緊張してしまった。……あれ、緊張って伝染病だっけ?

なんで腐れ縁なのに緊張してるんだろうと頭では思うのに、何か話そうと思うほど真っ白になるこれは、緊張以外の何物でもない。

沈黙がつづく。


「……あのさ。久しぶりに、一緒に帰らねえ?」


ひどく小さな声だった。私は伝染病について考えるのをついに放棄した。

見つめる先のグリーンは相変わらず外を見たままだったけど、私が返事しないからか、ちょっとしてからようやくこちらを見る。

真っ赤な頬に、思わず緊張していた頬がゆるんでしまった。


「……もっと、女の子慣れしてるのかと思ってた」
「……慣れてなくて悪かったな」
「100人と付き合ったんじゃないの?」
「ねーよ」
「じゃあ50?30?……15人とか妥当なんじゃない?」
「あー、ったくうっせーな!」


帰るぞ、と一言だけ乱暴に言ってぐんぐん近づいてきたグリーンは、そのまま私の手をつかんで歩きだす。

びっくりして見上げた横顔の頬はまだ赤いけど、さっきまでの伝染性のある緊張はほぐれたみたいで、安心した。
Thanks;xx
101201

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