つむじ風みたいな突風が吹いて、私がもたれかかってた木も、近くの排水溝につもってた枯れ葉も一気に舞い上がる。 思わずつぶった目をうっすらと開いたら、はらはらと散る焦げ茶や赤茶の向こうに、濃い緑のマフラーをしたグリーンがピジョットから飛び降りるのが映った。 「わりぃ、なまえ!」 枯葉のなかを走ってくるグリーンはなんだか今までにないくらい必死な顔で、私の前に着くと荒い息をととのえるようにかがんで、大きく2回、息をついた。 「…大丈夫?」 「いや、お前こそ…」 「私?」 びっくりしたみたいに目を見開いて、下から見つめてくるグリーンに、私も目を見開く。どうみたってグリーンの方が「大丈夫?」な状態だと思うんだけど。 「…だってオレ、お前のことかなり待たせただろ?」 ようやく息がととのったらしく、グリーンは屈めてた姿勢を元に戻す。 いつもの定位置、私よりも高い位置に戻ったグリーンはやっぱり美形に代わりはないけど疲れてるのは一目瞭然で、つんつん立った髪の毛にもやっぱり元気がないように見えた。 会うのは約1ヵ月ぶりだった。 1ヶ月経ってもグリーンが遅刻してくるのはいつものことで、だけど今日は不思議といらいらしなかった。前はすこし待たされるだけで耐えられなかったけど。 「べつに、平気だよ?」 「……」 「なに、その顔」 「なまえ、悪いもんでも食ったか?」 寒空の下に女の子を待たせて〜とか言わないのかよ、とグリーンは気味悪そうに私を見る。 …やっぱり訂正。グリーンは疲れてるって言ってもグリーンだった。 「言ってほしかった?」 「…遠慮します」 「私だって、そんなにいつも怒ってなんかないよ」 「…そうか〜?」 「怒るのは、誰かさんがいつも遅刻するから…」 本当はいつも不安で、グリーンは私なんかに会いたくないんじゃないかなって。だからほっとする反面、怒ってしまうんだけど。 「それは、…ジムが」 「わかってるよ。私との予定の日ばっかり、ジム戦入るんだもんね、トキワジムは」 私の皮肉に困ったような顔をするグリーンが、いつもずるいと思う。だから今日は顔を背けて言った、のに。 「……よかった」 「…は…?」 「やっぱりなまえはなまえだ」 今日の反応は、いつもとちがった。びっくりしてつい顔をあげたら、ほっとしたみたいな、泣きだしそうなグリーンがいて、さらにびっくりした。 「ぐ、グリーン…?」 「とつぜんなまえが怒んねーから、愛想尽かされたかと思ったぜ」 ばかやろう、と言ってほおに手を滑らせたグリーンは、それをぐにぐに引っ張ろうとしたんだと思うけど、その前にグリーンの手のひらは、冷えた私の皮膚に一瞬ためらった。 「…寒空の下に女の子待たして、本当ごめん」 「な…?」 グリーンが謝った!!?と思うまもなく熱いくちびるがまぶたに降りてきて、私はあわてて目をつぶった。 グリーンこそ、悪いもの食べたんじゃないのかな。 1と0の構築式 Thanks;rim |