とつぜんレッドが私の部屋に来た。 私は今日はぴょこぴょこと毛先が跳ねていて、どんなに直そうとしても無理で、嫌で嫌で仕方がないから誰とも会いたくなかったのに。 「…なまえ、」 「ひゃぁっ!?」 「……」 「な、なに?」 「何、そんなに驚いてるの」 そりゃあ、さっきまで全然話さなかったレッドが声を発したからだけど、とは言えなくて、訝しげなレッドの視線にあははと空笑いするしかない。 「…機嫌わるい」 「え、どうして?」 「オレじゃなくて、なまえが」 何かあった?と聞くレッドは、何しに来たんだかわからない。 肯定することもできなくて、視界に入る跳ねた髪ひとふさを直すようにつよく引っぱったら、ふとレッドはそこに視線を落とした。 ベッドに座って、レッドは私のその跳ねた髪ひとふさだけを、ピンポイントでじっと見つめる。 「…ねんりきでもかけてる?」 「…ねんりき?」 話しかけたらようやく視線がはずれてほっとしたけど、今度はまっすぐに目を見つめてくるから、余計にタチが悪かった。 「だ…って、じっと見てるから…」 「じっと見たらねんりきがかけられるの」 レッドが大まじめな顔で聞くから、私はまばたいた。…あれ…からかわれてる…?でもレッドって、冗談言ったりしないし…。 「か、かけられないかな?」 「…試してみる?」 「……どうやって?」 いつのまにか俊敏な動きでベッドから立ち上がったレッドが、カーペットに座った私の目の前にぺたんと腰を下ろす。 そうしてレッドは、そのさっきまで見つめてた跳ねた私の髪ひとふさをぎゅっとつかんだ。何事かと顔を上げた先で、またあの視線につかまった。 何これ、…ち、近い…! 距離を取ろうと頭を引こうにも髪の毛をつかまれてるからできなくて、なおレッドが近づいてくるのにぴくりとも動けない。まばたきすらできないから目が乾いてくる…。 ふに、とくちびるにあったかくてやわらかいものが触れた感覚で、ようやく私はまばたきをした。 「〜〜…っな!!?」 「…いまなまえ、びくってした」 「なななっ、レッド、何やって」 触れた拍子に私の体が大きく跳ねたから、つかまれた髪も合わせられたくちびるもするりと離れた。 離れたレッドが、めずらしく笑みを浮かべて話すけど今はそれどころじゃなくて、私はとっさに口をおおう。 「…ねんりきの実験?」 「じっ…!?」 「本当に動かなくなるのかなって」 動かなくなったね、とうれしそうなレッドは今した行為をちゃんと認識してるのかな…。 疑わしくってレッドをじろりとにらむように見つめたら、レッドは笑みをそのままに、首をかしげた。 「…教えてあげようか」 「なにを?」 「ねんりき」 「……髪の跳ねがもとに戻るなら、教えてほしいけど」 「跳ねたままでも、かわいい」 …うん、やっぱりねんりきは、レッドしか使えないと思う。 絶滅危惧種 Thanks;rim |