※ツナ視点 冬休みもあと少し。オレは残った宿題の追いこみに入っていた。 机に向かって必死で動かしていたシャー芯がなくなり、補充しようとペンを置いたとき、オレはふとその自分の右手の平を見つめた。 気づいたのはいつだっただろう…。 オレにとってあいつは、傍にいるのが当たり前の存在であり、ときに姉にも妹にもなる、同い年の幼なじみだったはずだった。 悩みごとはお互いになんでも相談したし、それに対してお互い、自分のことのように親身になって解決策を考えたりしてきた。 それが、オレらのあたりまえだったから。 オレは中学の頃、学校一のアイドル・笹川京子ちゃんに「憧れて」いた。…もちろん、なかばは恋だったと認める。けれども今こうしてふりかえってみれば、あれは恋ではないのだとわかる。 京子ちゃんは可愛くて、はじめはその笑顔に惹かれた。 そのころのオレは学校中からダメダメの「ダメツナ」で有名だったから、あいつ――なまえに相談するまでは、オレは完璧にあきらめていて、つまり京子ちゃんはただ憧れているだけの相手だったわけだ。 リボーンが来て知り合いにはなれたし、はなす機会だって増えたし、だけど根本ではいつまでも、「ダメツナ」の感じが抜け切らないままだった。 『なに言ってんの、はじめから弱気じゃあ恋愛なんてできないよ?』 『いいからいっしょに遊園地おいでってば。絶対いいことあるから』 『ほらね、いいことあったでしょ?実は私、京子ちゃんと友達になったんだ!これで私と京子ちゃん、ツナは他に友達つれてくれば、いい口実としてこれからも京子ちゃんとどっか遊びに行ったりできるよ』 初めて京子ちゃんと出かけるきっかけも、思えばあいつがつくってくれた。 いま思えば…皮肉なことに、だけれど。 …こんな風に過去を思い返すたび、オレは過去のオレに対する呆れと嫌悪、それからバカバカしさにやりきれなくなる。 何であのとき、気付かなかったんだろうか…。 悔いても仕方がないことだとわかっていながらもオレが思いだしてしまうのは、過去のオレのせいで、いまの状況がこんがらがりそうなほど複雑になってしまったからだ。 あいつはたぶん、いや確実にまだオレが好きなのは京子ちゃんだと思っているだろう。あいつがそういうやつなのは、オレがいちばんよく知っている。 …京子ちゃんにフラれたときになかばほっとしたオレは最低だ。自分の気持ちを知っていながら、最後の名残を打ち消すためだけに、オレは彼女に告ったのだから。 それを、彼女はお見通しだったけど。 そうして、彼女を傷つけてまで摘み取った花を、未だにオレは咲かせることができない。 見つめた先の手のひらを、オレはぎゅっと握りこんだ。 手のひらに野薔薇 フラれるのが、こんなにも怖いなんて。 Thanks;さよならワルツ
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