novel | ナノ

なまえが部活行かないなんて、もしかして明日は雪が降るんじゃない?と騒ぎ立てる友達に苦笑いをしつつ、バイバイを言って学校を出た。

空気は水分を含んで、潤んだ水の匂いがした。雪じゃなく雨なら降るかもしれない。

はらはらと散りはじめた枯葉の下をくぐるのは楽しくて、風邪気味で熱っぽく感じる身体もなんだか気にならない。

今日は本当に、すこし風邪気味だったからプールに入りたくなかっただけ。身体を動かすよりも休めたほうがいいと判断しただけ。部長にも認めてもらったから、サボりじゃない。

だからべつに、見たくて見たわけじゃない。むしろ選べるなら絶対に、見たくなんかなかった。

バス停で止まったバスに乗り込みながら、今日はグリーン見かけなかったなとふと思った瞬間の出来事だったから、私にとっては心のいちばんやわらかい部分をむき出しにしたような状態に等しかった。


「…大丈夫か?」
「は、はい…あの、すみません」
「謝んなよ。オレも悪かったんだからお互い様だ、気にすんな」


手を差し伸べたグリーンの声がやわらかい。

私と入れ違いにバスの降車口から降りたふたりは、私に気づかなかったらしい。乗車口で動けなくなった私なんかにかまわず、プシュっと空気を吐いて扉が閉まる。

発進の衝撃によろめきながらも手すりに掴まって、この時間から学校の方向に歩き始める彼らを見つめていたけれど、すぐに見えなくなった。

ついに空が泣き出して、ガラス窓にぽつぽつと染みをつくっていく。

ace/110205
加筆修正済み
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